卵巣腫瘍の症状

卵巣腫瘍には様々な種類があり、おおまかに悪性度から分類すると、良性と悪性の他に、境界悪性(良性と悪性の中間)というものに分けられます。さらに良性、悪性、境界悪性の中にさまざまな種類の腫瘍があります。

正常の卵巣は、通常2~3cmほどの大きさですが、卵巣腫瘍ができると、大きなものでは20-30cmほどの大きさになることもあります。必ずしも大きいから悪性というわけではありません。

また、良性、悪性にかかわらず腫瘍が小さいうちは、無症状であることが大半です。しかし、腫瘍が大きくなるにつれて、腹部膨満感や下腹部痛、頻尿といった自覚症状が現れます。性器からの出血を伴うケースもあります。

また、卵巣腫瘍はお腹の中で捻れることがあり、茎捻転と呼ばれます。この場合下腹部の激痛が起こります。
卵巣腫瘍はお腹の中で破裂することもあり、この場合も下腹部の強い痛みとなって現れます。
捻転や破裂は基本的に良性である皮様嚢腫(成熟奇形腫)という腫瘍でよく見られます。
皮様嚢腫では、腫瘍の中に皮膚や髪の毛、歯など様々な組織が混在します。甲状腺由来の組織が含まれる場合に、まれに下痢や顔面紅潮(カルチノイド症候群)や頑固な便秘(新カルチノイド症候群)を起こすこともあります。

悪性の卵巣腫瘍では腹水がたまることがありますが、良性の卵巣腫瘍(特に線維腫)でも、腹水や胸水がたまることがあり、メイグス症候群と呼ばれます。

卵巣腫瘍の原因

卵巣腫瘍には多くの種類がありますが、卵巣腫瘍のうち8割は「卵巣のう腫」と言われる基本的に良性のものです。卵巣のう腫は卵巣の中に液体が溜まる腫瘍の総称で、液体がたまることで卵巣がおおきくなります。
種類によって内部に溜まる物質が異なり、液体に脂肪や皮膚、髪の毛、歯の成分などが含まれる「皮様嚢腫(成熟奇形腫)」や、漿液というさらさらの液体が溜まることによって起こる「漿液性のう腫」が多いです。
子宮内膜症が卵巣内で発症し、月経の度に出血した血液がたまるものは、「チョコレートのう胞」といいます。

一方、「充実性腫瘍」は、液体ではなく中身の詰まった腫瘍です。この場合、良性のこともありますが(「線維腫」など)、悪性の腫瘍が比較的多く卵巣がんといわれるものです。
卵巣がんの原因ははっきりわかっていない点も多いものの、出産経験のない方にやや発症しやすいことが知られています。子宮内膜症や肥満、脂肪の多い食事などもリスクを高めると考えられています。

卵巣腫瘍の治療法

卵巣腫瘍のなかでも、卵巣がんを予防するためには、原因の一つとされる高カロリーで脂肪分の多い食事を避けて、栄養バランスのよい食生活を送るようにしましょう。
また、出産の予定がなければ、低用量ピルを服用することで、卵巣がんのリスクを低く抑えることができますが、ピルの使用は乳癌のリスクは逆に高めると考えられています。

卵巣腫瘍の治療は、良性で小さなものであれば経過観察となることが多いです。あるていど大きい場合や、症状があるときには手術での摘出が必要です。とても大きい時には開腹手術を行いますが、多くの場合には腹腔鏡手術が可能です。
一方、悪性(卵巣がん)のときには、手術で腫瘍だけでなくリンパ節なども切除することがあります。また術後には抗癌剤による治療が行われることがあります。