栄養不足(栄養障害)の症状

人間の体は古いものを排出し、絶えず新しいものを作っているので、常にそのための栄養素を必要としています。栄養不足(栄養障害)になり、体に必要な栄養素が足りなくなると、体の代謝が妨げられ、様々な部分に異常が現れてきます。

まず、筋肉量が減少し、筋力が低下していきます。次いで、体内のたんぱく質の量も減っていき、肝臓や筋肉で新たに組織を作る能力も低下していきます。それに伴って、免疫能力や傷を治す能力も低下し、抗体の生産がされにくくなり、感染症のリスクが高まります。ちょっとした外傷や風などが重傷化しやすくなります。さらに栄養が不足してくると、主要臓器の機能不全に陥ります。

栄養障害を全体像としてとらえると上記のような症状が現れますが、もう少し焦点を絞っていくと、特定の栄養素の不足により生じる症状が見えてきます。

たとえば、ビタミンAが不足すると、目の暗順応障害が起こります。また、目の角質化により眼球乾燥症の症状も現れます。角質化は目だけでなく、皮膚、呼吸器、消化管および尿路の粘膜にも起こります。葉酸が不足した場合には、舌炎、下痢、うつ状態、体重減少などの症状が出ます。妊娠中の場合には、胎児に脳障害が出る恐れがあります。

栄養不足(栄養障害)の原因

栄養不足は身体の維持に必要な栄養量の摂取が適切でなかったり、栄養成分のバランスが崩れていたりすることによって身体の機能にダメージが生じてしまうことで、栄養過剰と低栄養の二種類あります。

しかし通常は後者の低栄養を指し、ストレスや食事の摂取不足に起因する栄養失調と同義です。

一般的には体重が標準より二割以上減少していたり、過去半年以内に元の体重より一割以上減った場合に問題視されます。食事による栄養素の摂取が不十分であったり、体内での吸収や利用における障害や体組織崩壊によって栄養素が不足した状態のことであり、下痢貧血、体温の低下、低血圧、感染への抵抗力低下、発育不良、無気力疲労感などが伴います。

栄養不足には主に四つの直接的要因が考えられています。一つ目は食事の摂取量の不足です。原因として消化器疾患による食欲不振、悪性の腫瘍による消耗性疾患、うつ病などの精神疾患、神経性の食欲不振症、内分泌疾患などが挙げられます。

二つ目は消化吸収障害で、消化性の潰瘍や慢性的下痢を伴った疾患、吸収不良や寄生虫によるもの等が原因として疑われます。三つ目は糖尿病などによる栄養素利用障害、四つ目が代謝亢進によって熱量の消費が増大する現象によるもので、慢性的感染症や内分泌疾患の症状として現れます。

栄養不足(栄養障害)の予防/治療法

標準体重よりも今の体重が20%以上へっている状態を栄養障害といいます。また過去6カ月以内に以前の体重から10%以上の体重減少があった場合も同様にいいます。

一般的に栄養障害は4つに分類されています。

一つ目には食事の摂取量減少がおこる内分泌疾患があり、2つ目には慢性の下痢を伴う消化吸収障害、3つ目には糖尿病などの栄養素利用障害、4つ目には代謝亢進による熱量消費の増大がおこる内分泌疾患や感染症があげられます。

基本的な治療の流れとしては、病気のことを理解し、今の患者の食欲や食事摂取状況を詳しく聞きながら必要な検査や診断をすみやかに行い病態に応じた適切な治療をすすめます。栄養障害患者のほとんどはたんぱく質や炭水化物、水、ミネラルやビタミンなどの摂取量を徐々に増加する必要があります。

病院などの医療機関では、医師や栄養管理士、栄養専門看護師、心理士、ソーシャルワーカーなどがチームとなって患者個人にあった栄養失調の改善プログラムを実施していくのが望ましいと考えられています。

また本来、経口摂取が望ましいがどうしても困難な患者では経皮内視鏡的胃瘻も効果があるとの報告があります。