血液検査の項目の一つであるコリンエステラーゼ(ChE)。

あまり聞き慣れない言葉ですが、この検査値が異常であった場合、肝臓に関わる重要な疾患が隠されている可能性があります。

今回は、検査値が低い場合と高い場合に、それぞれ考えられる病気やそれに対する治療法、コリンエステラーゼを正常値に保つ方法などを具体的にご紹介していきます。

要チェック項目


□コリンエステラーゼとは血液検査の検査項目の一つである
□コリンエステラーゼの異常値は肝臓に疾病が原因であることが多い
□コリンエステラーゼが異常値を示した場合、多くは生活習慣を見直すことで改善が見込める

コリンエステラーゼ(ChE)とは何か?

コリンエステラーゼとは肝臓で作られる酵素の一種で、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2種類があります。

アセチルコリンエステラーゼ


AChEと表記され、別名「真正コリンエステラーゼ」とも呼ばれます。神経組織や赤血球、筋肉組織に存在し、神経伝達に関係する働きをするアセチルコリンを、コリンと酢酸に分解する働きをします。

ブチリルコリンエステラーゼ


BuChEと表記され、別名「偽コリンエステラーゼ」とも呼ばれます。肝臓、血清などに存在し、血液検査などで測定するコリンエステラーゼとは、主にブリチルコリンエステラーゼのことを指します。

コリンエステラーゼの基準値は、男性が240~486U/L、女性が201~421U/Lとされています。

健康診断の血液検査などで、この基準値よりも検査値が低かったり高い場合、その多くは肝臓に何らかのトラブルが起こっている可能性を示唆しています。

コリンエステラーゼ(ChE)の数値が高い場合に疑われる疾病

コリンエステラーゼの検査値が高い場合に疑われる疾病は以下のとおりです。

疑われる疾病


・脂肪肝
糖尿病
ネフローゼ症候群
アルコール中毒

これらに共通する治療法は、食事療法が中心となります。肝臓に負担をかけないことが重要とされ、注意するポイントとしては以下の項目があります。

食事療法のポイント


・アルコールや糖分の摂取を控える
・過度な脂肪摂取を控える
・バランスの良い食事を摂る

これらに加えて適度な運動も並行して行うことも重要といわれています。

また、特に脂肪肝については有効な治療薬がなく、食事と運動がもっとも有効な治療法とされています。基本的な生活習慣を見直すことが唯一の治療法といえるでしょう。

コリンエステラーゼ(ChE)の数値が低い場合に疑われる疾病

コリンエステラーゼの検査値が低い場合に疑われる疾病は以下のとおりです。

疑われる疾病


肝硬変
・肝炎
・栄養失調
心筋梗塞

このうち、肝炎を発症していた場合の治療法としては、安静にすることと食事療法が挙げられます。食事療法で注意すべきポイントは以下のとおりです。

肝炎の食事療法のポイント


・たんぱく質の摂取を抑える
・1日の必要カロリーは糖類から摂取する
・アルコール摂取を控える

また、肝硬変と診断された場合は病状の進行度によって治療法が変わってきます。

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コリンエステラーゼ(ChE)が異常値となる原因

コリンエステラーゼが異常値となる原因は、これまでに挙げた疾病によるものが多いですが、その他の要因として体質によるものが大きいとされています。

このような場合、基本的には症状が現れることがなく、治療の必要もないとされています。

しかし、もともとの体質でコリンエステラーゼの数値が低い場合は、手術時に行われる全身麻酔によってショック症状を起こす危険性があるため、手術前の血液検査ではコリンエステラーゼの検査値を注視する必要があります。

コリンエステラーゼ(ChE)を正常値に保つために

コリンエステラーゼは主に肝臓に関する異常を知らせてくれるものです。

体質以外で異常値が見られる場合、そのほとんどが肝臓に何らかの原因があり、多くは飲酒や食事内容などの生活習慣の見直しによって改善と予防が見込めます。

これは肝臓に関する疾病に限った話ではなく、心臓病や高血圧、糖尿病などのさまざまな病気にも大きく関わってくるものです。

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肝臓の健康度を図るコリンエステラーゼ(ChE)

「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、肝臓は異常があった場合でも自覚症状が見られないことが多いものです。

それだけに血液検査によって得られるコリンエステラーゼの検査値は、肝臓の異常を知らせてくれるシグナルといえます。

また、何よりも普段の生活習慣、食事などの基本的なことが非常に重要であることもお分かりいただけたのではないでしょうか。

特にお酒が大好きで毎日のように飲酒の習慣がある人は、この機会に見つめ直してみてはいかがでしょうか。

週のうち1〜2日程度は飲酒を控え、肝臓に負担をかけない日を設けるだけでも予防が見込めます。

肝臓を大切に、いつまでも健康でいるために、ぜひ参考にしてみてください。

(監修:Doctors Me 医師)