受験生や社会人の方ですと、試験前日や大事な仕事を終わらせるために、徹夜で机に向かった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
徹夜などで寝不足になると、頭痛を引き起こしてしまう場合がありますが、寝不足と頭の痛みには何か関係があるのでしょうか。
今回は医師の建部先生に、寝不足になると頭痛になる原因、ともなう症状、そして快適に睡眠が出来る方法などを解説していただきました。
仕事や勉強の追い込みでどうしても夜遅くまで起きてしまい、翌朝も普段通りに活動した時、皆さんの多くは頭痛を経験されたことはありませんか?
今回は寝不足とその頭痛についてお話をさせていただきます。
寝不足による頭痛は今のところ、以下の原因が有力とされています。
人は酸素を空気中から取り込み二酸化炭素を吐き出す呼吸の際に、食事由来の糖を分解し、その糖が少なくなってしまうと脂肪を分解してエネルギーを作り出し、その過程で、活性酸素が多く作り出されてしまいます。
最初のうちは体内に備わっている抗酸化システムがビタミンCなどの抗酸化作用のある物質を動員して、速やかにこれら活性酸素を無害化してしまうので問題は生じません。
しかし、活動時間が長くなりすぎると大量の活性酸素を処理し切れなくなり、処理しきれない活性酸素が少しずつ細胞や神経細胞が傷つけ、エネルギー代謝や中枢神経系に異常が生じます。
睡眠不足の状態で起床することになると、脳に未処理の活性酸素がまだ多く残存するうえ、起床直後からのエネルギー産生により活性酸素が追加されてしまうことになるので、脳は自分自身の細胞を守るために脳への血流量を減らし、活性酸素の新規の発生や流入を少なくしているのです。
結果、脳の血流量が減ることにより、脳機能が低下するため、頭痛や耳鳴りといった症状が出現します。
人は以下の2種類の自律神経が働いています。
■ 交感神経
活動、緊張、ストレス、興奮している状態です。脳血管収縮および脳血流減少の作用を有します。
■ 副交感神経
休息、睡眠、リラックスしている状態です。脳血管拡張および脳血流増加の作用を有します。
通常、起床している時間帯は交感神経が働き、睡眠中は副交感神経が働いていますが、興奮、緊張、ストレス状態が続いた上に睡眠時間の短縮状態が続くと、副交感神経がうまく作動しにくくなります。
三大神経伝達物質の一つで精神を安定させるセロトニンの分泌も減る傾向となり、睡眠の質(脳をいかに効率よく休めているのか)が低下し、相対的に脳活動が亢進している状態が長く続くため脳が疲労してしまいます。
寝不足だと、ほどなく交感神経優位に切り替わってゆくので脳への血流コントロール障害が発生し、この過程で頭痛が発生します。
寝不足による頭痛の痛む部位は、その部分の大脳の領域の過活動状態と、その後の血流量の低下や活性酸素の残存程度を反映している場合があります。
脳の領域としては前頭葉のダメージが推測されます。
前頭葉はもともと脳全体を統括し、意欲、創造、実行によって将来に向かって生きるための指令を出し続ける司令塔の役割を果たしています。
前頭部の痛みが発生する前は、勉強や精緻な計画といった知的活動を活発に行っていた可能性があります。
脳の領域としては視覚中枢がある後頭葉のダメージが推測されます。
目に負担をかけるようなPCモニターやスマートフォンの見過ぎといった可能性があります。
脳の領域としては側頭葉でありこの部分のダメージが推測されます。
しかし、側頭部は、聴覚、嗅覚、情緒、感情、記憶、言語など複数の脳機能を有しているので、様々な原因、可能性が考えられます。
延髄にある嘔吐中枢が血流変化などの刺激を受けて嘔気、嘔吐がおこる場合が主です。
しかしながら、メニエール病や硬膜下血腫などの疾患が隠れている場合も有り得ますので、繰り返す場合は医療機関受診が必要です。
寒気を感じることがあるというメカニズムは以下の2つが考えられます。
■ 交感神経と副交感神経
交感神経と副交感神経のアンバランスによって全身の血液循環が上手く行われない結果、体を構成する細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らず活動が出来ず、寒気を発症する場合があります。
■ 血液循環
血液循環の問題が大脳-視床下部にある体温調節中枢でも生じているため、実際に必ずしも寒いわけではなく、体が正常に機能する為の温度に達していないと体温調節中枢が誤った判断をしてしまう場合に寒気を感じます。
寝不足の結果、交感神経が優位の状態が続くと血管収縮を起こしやすくなります。筋肉への血液循環も悪くなるので活性酸素を除去するために必要な栄養や酸素が十分に行き渡らなくなります。
特に人体の構造上、頭部を支えるための負荷がかかる肩、頚部の筋肉にはその影響が出るために起こり、筋細胞がしっかりと修復・回復されていないと身体活動の際に十分に働くことはできません。
そして、無理に身体を動かそうとすると負荷がかかるため、肉離れなどを起こさないように生体防御が働き、生体防御反応による血流量低下作用によっても肩こりは起きてしまいます。
近年になって、寝不足というストレスを身体が受けると心因性発熱という生理現象によって体温の上昇がみられるということが分かってきました。
風邪による発熱と、寝不足による発熱には以下のような違いがあります。
■ 風邪などの発熱の場合
ウイルスに感染して風邪をひいた場合などは、体内で交感神経の働きを活発化させて発熱し、それによってウイルスを退治しようとします。
■ 寝不足による発熱
寝不足による発熱は、ストレスが交感神経の働きを活発化させてしまい、自律神経のバランスが崩れてしまうものです。
寝不足によって交感神経が優位になりやすい状態が続くと血流量低下傾向となるため大脳皮質の機能低下し、結果的に集中力と判断力が低下します。
誰しも少なくとも1度は寝不足の状態で翌日の試験に臨んだ結果、思わぬケアレスミスを連発してしまった経験はこういう理由からなのです。
寝不足による頭痛の原因が活性酸素によって炎症を生じ、その炎症が頭痛の原因となっているならば、頭痛薬、解熱鎮痛剤は有効です。
しかしながら、炎症を呈しているのではなく、脳への血流量が原因である場合は頭痛薬、解熱鎮痛剤は無効となります。
結果、心身の休息、身体の活性酸素が傷つけた細胞や組織の修復、さらには記憶の再構成など高次脳機能にも繋がります。
また、脳の一部分である下垂体前葉からは、睡眠中に2~3時間の毎に成長ホルモンが分泌されるので、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進されるのです。
良い睡眠は全身状態をリセットし、より良い体調に体を調整してくれる点で健康に良いのです。
寝不足による頭痛は、活性酸素のダメージと自律神経の不調による脳血流量の調節障害が原因です。
根本的な解決は日ごろの夜間睡眠時間を確保する、または15~30分程度の昼寝をする時間を確保する、といったことですが、これが難しいのであれば、以下の対処法でいくらか緩和、予防してゆくことが大切です。
自律神経のうちリラックスしている状態を作り出そうとする副交感神経を刺激する施術を行うことでこの神経が優位となり、脳血管拡張、脳血流増加の作用によって残存する活性酸素や老廃物の除去や栄養・酸素の供給が促され、症状の改善が期待できます。
寝不足の原因として、繊細な方ほど就寝時の寝具の不具合による影響は無視できません。
せっかく眠気を催し副交感神経が優位になりつつあっても枕やベッドが合わず、かえって交感神経が優位になってしまい眠れない・寝不足の状態に陥ってしまうことがありますので、寝具の調節を行ってゆくのが有効な解決策と考えられます。
人は昼間に活動し夜間は眠るという、体内時計を受け継いでいます。
睡眠を促すホルモン、メラトニンは夕方から脳の松果体という部分から分泌されて体内時計に作用し覚醒から自然な眠りを誘う作用があります。
メラトニンは眼から入る光刺激でその分泌がコントロールされていて、寝室内が明るいままだと体内時計の働きが乱れてその分泌が抑えられ、睡眠覚醒リズムが狂ってしまいます。
さらに、明るいままの室内環境自体が交感神経を優位にしてしまいます。したがって、寝室の照明はできるだけ暗くするのが望ましいと言えるでしょう。
特に正常なメラトニン分泌を維持のためには、できるだけ就寝前には500ルクス以上の光や波長の短い青白い光(スマートフォンなどのブルーライト等)が、眼から入る光刺激とならないように配慮が必要です。
寝室の温度や湿度が極端な環境で体が不快に感じると、肉体的ストレスが生じ、交感神経優位となって寝不足とその頭痛になりやすくなります。
寝室内の温度は、冬は16~19℃、夏は26℃以下で、湿度は50%前後を保つと快眠しやすくなり、冬は、布団をたくさん重ねれば寝室内の温度が低くても構わないと考えがちです。
また、布団の内外の温度差が大きいと布団内での温度と湿度の調整が難しくなり、寝返りも打ちにくくなることで寝不足の原因になり得ますので寝室を適切な温度にコントロールが望まれます。
肉料理などタンパク質を多く含む食材の胃における分解、消化には、果物、野菜、炭水化物と比較すると最も時間が必要で、その量や脂肪分の含有量などによっても差が出ますが一般的には4時間以上かかるとされています。
寝不足による頭痛への対処として、 夕食はできるだけ就寝3時間ほど前には食べ終えておくと腹部膨満感で寝つきが悪くなる、といったことは防げると考えられます。
また、夕食時の極端に香辛料が効いた料理や、夕食後にコーヒーなどカフェインを含む飲料物を避けると、副交感神経のスイッチが入りやすくなり自然な眠気、睡眠が促されるので対処法の一つになります。
お酒を飲んだ直後は眠くなりますが、お酒のアルコールはその後3時間ほどでアセトアルデヒドに変わってしまい、交感神経を優位に導くために眠りを浅くし、睡眠時間も短くしてしまう傾向があります。
たくさんお酒を飲んでもいないのに寝酒をした翌日、頭痛がするのはこのような睡眠の質が低下することで起こっている可能性があります。
できるだけ大の字になれるほどのスペースでまずは仰向けになっていただいて、寝返りが打ちやすい状態にします。その上で寝返りを妨げない程度の掛け布団や毛布を使用することで熟睡できる環境を作り、寝不足とその頭痛を起こしにくくする方法があります。
また、部屋着としてお使いのジャージやスウェットをパジャマとしてそのまま着用すると、その分厚くゴワッとした着心地のため寝返りがしにくく熟睡を妨げる場合がありますので、就寝のときは、ワンサイズ大きめのゆったりしたパジャマにしてみるのもよいでしょう。
就寝前にリラックス効果がある音楽を聴く、アロマテラピーの香りを取り入れる、寝る前の入浴で体を温める等を行って副交感神経を優位にする方法もあります。
目が覚めている活動中において食糧の獲得や逃走などのために酷使した交感神経を一定時間休め、脳も休息し覚醒のレベルが低下した状態でもあり、このオンとオフがうまく噛み合わないと、寝不足とそれによる頭痛を生じてしまうのです。
寝不足の頭痛を治す最も有効な手段は睡眠ですが、寝不足の頭痛に紛れて、片頭痛や緊張型頭痛が隠れている場合もあります。
様々な工夫を凝らしても改善が無いならば、医療機関を受診してみましょう。
(監修:医師 建部雄氏)
徹夜などで寝不足になると、頭痛を引き起こしてしまう場合がありますが、寝不足と頭の痛みには何か関係があるのでしょうか。
今回は医師の建部先生に、寝不足になると頭痛になる原因、ともなう症状、そして快適に睡眠が出来る方法などを解説していただきました。
寝不足になると頭痛がする原因
仕事や勉強の追い込みでどうしても夜遅くまで起きてしまい、翌朝も普段通りに活動した時、皆さんの多くは頭痛を経験されたことはありませんか?
今回は寝不足とその頭痛についてお話をさせていただきます。
寝不足による頭痛は今のところ、以下の原因が有力とされています。
1:活性酸素の影響
人は酸素を空気中から取り込み二酸化炭素を吐き出す呼吸の際に、食事由来の糖を分解し、その糖が少なくなってしまうと脂肪を分解してエネルギーを作り出し、その過程で、活性酸素が多く作り出されてしまいます。
最初のうちは体内に備わっている抗酸化システムがビタミンCなどの抗酸化作用のある物質を動員して、速やかにこれら活性酸素を無害化してしまうので問題は生じません。
しかし、活動時間が長くなりすぎると大量の活性酸素を処理し切れなくなり、処理しきれない活性酸素が少しずつ細胞や神経細胞が傷つけ、エネルギー代謝や中枢神経系に異常が生じます。
睡眠不足の状態で起床することになると、脳に未処理の活性酸素がまだ多く残存するうえ、起床直後からのエネルギー産生により活性酸素が追加されてしまうことになるので、脳は自分自身の細胞を守るために脳への血流量を減らし、活性酸素の新規の発生や流入を少なくしているのです。
結果、脳の血流量が減ることにより、脳機能が低下するため、頭痛や耳鳴りといった症状が出現します。
2:自律神経コントロールの不調
人は以下の2種類の自律神経が働いています。
■ 交感神経
活動、緊張、ストレス、興奮している状態です。脳血管収縮および脳血流減少の作用を有します。
■ 副交感神経
休息、睡眠、リラックスしている状態です。脳血管拡張および脳血流増加の作用を有します。
通常、起床している時間帯は交感神経が働き、睡眠中は副交感神経が働いていますが、興奮、緊張、ストレス状態が続いた上に睡眠時間の短縮状態が続くと、副交感神経がうまく作動しにくくなります。
三大神経伝達物質の一つで精神を安定させるセロトニンの分泌も減る傾向となり、睡眠の質(脳をいかに効率よく休めているのか)が低下し、相対的に脳活動が亢進している状態が長く続くため脳が疲労してしまいます。
寝不足だと、ほどなく交感神経優位に切り替わってゆくので脳への血流コントロール障害が発生し、この過程で頭痛が発生します。
寝不足による頭痛の部位によっての違い
寝不足による頭痛の痛む部位は、その部分の大脳の領域の過活動状態と、その後の血流量の低下や活性酸素の残存程度を反映している場合があります。
前頭部
脳の領域としては前頭葉のダメージが推測されます。
前頭葉はもともと脳全体を統括し、意欲、創造、実行によって将来に向かって生きるための指令を出し続ける司令塔の役割を果たしています。
前頭部の痛みが発生する前は、勉強や精緻な計画といった知的活動を活発に行っていた可能性があります。
後頭部
脳の領域としては視覚中枢がある後頭葉のダメージが推測されます。
目に負担をかけるようなPCモニターやスマートフォンの見過ぎといった可能性があります。
側頭部
脳の領域としては側頭葉でありこの部分のダメージが推測されます。
しかし、側頭部は、聴覚、嗅覚、情緒、感情、記憶、言語など複数の脳機能を有しているので、様々な原因、可能性が考えられます。
寝不足による頭痛で伴う症状
吐き気
延髄にある嘔吐中枢が血流変化などの刺激を受けて嘔気、嘔吐がおこる場合が主です。
しかしながら、メニエール病や硬膜下血腫などの疾患が隠れている場合も有り得ますので、繰り返す場合は医療機関受診が必要です。
寒気
寒気を感じることがあるというメカニズムは以下の2つが考えられます。
■ 交感神経と副交感神経
交感神経と副交感神経のアンバランスによって全身の血液循環が上手く行われない結果、体を構成する細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らず活動が出来ず、寒気を発症する場合があります。
■ 血液循環
血液循環の問題が大脳-視床下部にある体温調節中枢でも生じているため、実際に必ずしも寒いわけではなく、体が正常に機能する為の温度に達していないと体温調節中枢が誤った判断をしてしまう場合に寒気を感じます。
肩こり
寝不足の結果、交感神経が優位の状態が続くと血管収縮を起こしやすくなります。筋肉への血液循環も悪くなるので活性酸素を除去するために必要な栄養や酸素が十分に行き渡らなくなります。
特に人体の構造上、頭部を支えるための負荷がかかる肩、頚部の筋肉にはその影響が出るために起こり、筋細胞がしっかりと修復・回復されていないと身体活動の際に十分に働くことはできません。
そして、無理に身体を動かそうとすると負荷がかかるため、肉離れなどを起こさないように生体防御が働き、生体防御反応による血流量低下作用によっても肩こりは起きてしまいます。
発熱
近年になって、寝不足というストレスを身体が受けると心因性発熱という生理現象によって体温の上昇がみられるということが分かってきました。
風邪による発熱と、寝不足による発熱には以下のような違いがあります。
■ 風邪などの発熱の場合
ウイルスに感染して風邪をひいた場合などは、体内で交感神経の働きを活発化させて発熱し、それによってウイルスを退治しようとします。
■ 寝不足による発熱
寝不足による発熱は、ストレスが交感神経の働きを活発化させてしまい、自律神経のバランスが崩れてしまうものです。
判断能力の低下
寝不足によって交感神経が優位になりやすい状態が続くと血流量低下傾向となるため大脳皮質の機能低下し、結果的に集中力と判断力が低下します。
誰しも少なくとも1度は寝不足の状態で翌日の試験に臨んだ結果、思わぬケアレスミスを連発してしまった経験はこういう理由からなのです。
寝不足による頭痛に、頭痛薬が効かない場合があるのはなぜ?
寝不足による頭痛の原因が活性酸素によって炎症を生じ、その炎症が頭痛の原因となっているならば、頭痛薬、解熱鎮痛剤は有効です。
しかしながら、炎症を呈しているのではなく、脳への血流量が原因である場合は頭痛薬、解熱鎮痛剤は無効となります。
良い睡眠が健康に良い理由
良い睡眠は、筋肉や脳をはじめ全身の各臓器への血流を増加し、それにより活性酸素が効率よく除去され、活性酸素が傷つけた細胞や組織の修復も必要な栄養や酸素が十分に行き渡らせることを可能にします。結果、心身の休息、身体の活性酸素が傷つけた細胞や組織の修復、さらには記憶の再構成など高次脳機能にも繋がります。
また、脳の一部分である下垂体前葉からは、睡眠中に2~3時間の毎に成長ホルモンが分泌されるので、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進されるのです。
良い睡眠は全身状態をリセットし、より良い体調に体を調整してくれる点で健康に良いのです。
寝不足による頭痛を引き起こさない対処方法
寝不足による頭痛は、活性酸素のダメージと自律神経の不調による脳血流量の調節障害が原因です。
根本的な解決は日ごろの夜間睡眠時間を確保する、または15~30分程度の昼寝をする時間を確保する、といったことですが、これが難しいのであれば、以下の対処法でいくらか緩和、予防してゆくことが大切です。
ツボ、マッサージ
自律神経のうちリラックスしている状態を作り出そうとする副交感神経を刺激する施術を行うことでこの神経が優位となり、脳血管拡張、脳血流増加の作用によって残存する活性酸素や老廃物の除去や栄養・酸素の供給が促され、症状の改善が期待できます。
寝具
寝不足の原因として、繊細な方ほど就寝時の寝具の不具合による影響は無視できません。
せっかく眠気を催し副交感神経が優位になりつつあっても枕やベッドが合わず、かえって交感神経が優位になってしまい眠れない・寝不足の状態に陥ってしまうことがありますので、寝具の調節を行ってゆくのが有効な解決策と考えられます。
寝室の明るさ
人は昼間に活動し夜間は眠るという、体内時計を受け継いでいます。
睡眠を促すホルモン、メラトニンは夕方から脳の松果体という部分から分泌されて体内時計に作用し覚醒から自然な眠りを誘う作用があります。
メラトニンは眼から入る光刺激でその分泌がコントロールされていて、寝室内が明るいままだと体内時計の働きが乱れてその分泌が抑えられ、睡眠覚醒リズムが狂ってしまいます。
さらに、明るいままの室内環境自体が交感神経を優位にしてしまいます。したがって、寝室の照明はできるだけ暗くするのが望ましいと言えるでしょう。
特に正常なメラトニン分泌を維持のためには、できるだけ就寝前には500ルクス以上の光や波長の短い青白い光(スマートフォンなどのブルーライト等)が、眼から入る光刺激とならないように配慮が必要です。
寝室の温度や湿度
寝室の温度や湿度が極端な環境で体が不快に感じると、肉体的ストレスが生じ、交感神経優位となって寝不足とその頭痛になりやすくなります。
寝室内の温度は、冬は16~19℃、夏は26℃以下で、湿度は50%前後を保つと快眠しやすくなり、冬は、布団をたくさん重ねれば寝室内の温度が低くても構わないと考えがちです。
また、布団の内外の温度差が大きいと布団内での温度と湿度の調整が難しくなり、寝返りも打ちにくくなることで寝不足の原因になり得ますので寝室を適切な温度にコントロールが望まれます。
食事
肉料理などタンパク質を多く含む食材の胃における分解、消化には、果物、野菜、炭水化物と比較すると最も時間が必要で、その量や脂肪分の含有量などによっても差が出ますが一般的には4時間以上かかるとされています。
寝不足による頭痛への対処として、 夕食はできるだけ就寝3時間ほど前には食べ終えておくと腹部膨満感で寝つきが悪くなる、といったことは防げると考えられます。
また、夕食時の極端に香辛料が効いた料理や、夕食後にコーヒーなどカフェインを含む飲料物を避けると、副交感神経のスイッチが入りやすくなり自然な眠気、睡眠が促されるので対処法の一つになります。
寝酒を止める
お酒を飲んだ直後は眠くなりますが、お酒のアルコールはその後3時間ほどでアセトアルデヒドに変わってしまい、交感神経を優位に導くために眠りを浅くし、睡眠時間も短くしてしまう傾向があります。
たくさんお酒を飲んでもいないのに寝酒をした翌日、頭痛がするのはこのような睡眠の質が低下することで起こっている可能性があります。
就寝の姿勢
できるだけ大の字になれるほどのスペースでまずは仰向けになっていただいて、寝返りが打ちやすい状態にします。その上で寝返りを妨げない程度の掛け布団や毛布を使用することで熟睡できる環境を作り、寝不足とその頭痛を起こしにくくする方法があります。
また、部屋着としてお使いのジャージやスウェットをパジャマとしてそのまま着用すると、その分厚くゴワッとした着心地のため寝返りがしにくく熟睡を妨げる場合がありますので、就寝のときは、ワンサイズ大きめのゆったりしたパジャマにしてみるのもよいでしょう。
その他の対処方法
就寝前にリラックス効果がある音楽を聴く、アロマテラピーの香りを取り入れる、寝る前の入浴で体を温める等を行って副交感神経を優位にする方法もあります。
最後に建部先生から一言
もともと睡眠は、進化の過程で動物が獲得した食糧を確保できない時間帯において、体が使用するエネルギーを出来るだけ少なくする、いわゆる省エネモードです。目が覚めている活動中において食糧の獲得や逃走などのために酷使した交感神経を一定時間休め、脳も休息し覚醒のレベルが低下した状態でもあり、このオンとオフがうまく噛み合わないと、寝不足とそれによる頭痛を生じてしまうのです。
寝不足の頭痛を治す最も有効な手段は睡眠ですが、寝不足の頭痛に紛れて、片頭痛や緊張型頭痛が隠れている場合もあります。
様々な工夫を凝らしても改善が無いならば、医療機関を受診してみましょう。
(監修:医師 建部雄氏)
プロフィール
- 監修:医師 建部 雄氏
- 京都市生まれ。社会人を経て医師を志す。2001年、昭和大学医学部医学科卒業。 卒後、東京都内の大規模総合病院にて救急科の経験を積む。 その後、阪神淡路大震災において内科医が避難所等で切実に必要とされていた事実を知り、より多くより幅広く患者さんに対応できる医師を目指して総合内科へ転向を決意。 急性期病院・クリニックの勤務を経て、最も身近な医師としての研鑽を積んでいる。 現在は、横浜市内の総合病院に勤務中。週末を中心に休日夜間の非常勤先病院 救急外来勤務をほぼ趣味としており、失敗も成功も含めて経験は豊富。