いつもとは違う、移動していく腹痛、それはもしかして盲腸(虫垂炎)かもしれません。

痛みが強くなってから治療をするのではなく、早期発見によって負担を軽くしたいもの。

今回は、盲腸(虫垂炎)の症状から、手術を含めた治療法などの解説を医師の大橋先生解説していただきました。

盲腸とは


概要


医学的に正しくは急性虫垂炎と呼ばれ、盲腸は大腸と小腸がきりかわる部分の呼称です。

盲腸に付属する直径7ミリ程度の管腔様器官が虫垂であり、虫垂が細菌感染などで炎症が生じると虫垂炎になります。

一般の方にとっては盲腸(もうちょう)という言葉のほうが馴染みが深いようですが、盲腸が炎症を起こすというよりはそこに付属する虫垂の炎症が病気の本態なのです。

虫垂は通常、右下腹部に存在し、同じ右下腹部の痛みをきたす病気に結腸憩室炎があります。

女性であれば卵巣の病気や子宮外妊娠なども鑑別されるべきであり一概に右下腹部痛=急性虫垂炎とは限りません。

原因


原因は断定されませんが、15人に1人は一生のうちに経験すると言われています。


種類


炎症の程度によって〇〇性虫垂炎と呼ばれます。

軽症のものからカタル性、蜂窩織性、壊疽性と言われます。大雑把な概念語であり、医師によってみたては異なります。

症状


初期


典型的な経過としては上腹部の不快感や痛みが最初に起こります。

胃に付属した脂肪の膜が移動するため、炎症をきたした虫垂を覆うように、痛みが上腹部から右の下腹部に動いていきます。

多くの場合は食欲不振などを伴います。

中期


右下腹の痛みがひどくなり、人によっては救急車を呼ぶほどの激痛となります。

後期


「中期」の状態で放置すると、虫垂が破裂し、腹部全体の炎症となることがあります。

汎発性腹膜炎となれば、高熱や意識障害をきたし、加えて敗血症が続発すると多臓器不全となり、生命の危険もありえます。

救急車を呼ぶ痛みや症状の目安


救急車を呼ぶことになるまえに「初期」のうちに治療が開始されることが望ましいと考えられます。

中期症状が強く、自力で受診できない場合は救急要請もやむを得ないでしょう。

盲腸になる人とならない人の違い


不規則な生活などで免疫力が落ちた状態、バリウムの検査などがリスク因子として疑われていますがはっきりしたことはわかっていません。

治療法


手術をする場合


虫垂切除術
近年では腹腔鏡で虫垂切除を行う施設もあります。

小さいキズで術後の痛みも少なく過ごすことができます。

開腹
右下腹部に3センチほどのキズができます。

開腹となれば体型や炎症の程度によってはもっと大きなキズを要す場合もあります。

手術をしない場合


近年では抗生物質の質的向上により手術をしなくても、抗生物質の点滴だけで炎症を鎮めることができるようになりました。

しかし、虫垂が存在する限りはまた炎症を繰り返すおそれもあるので、手術が提案されることもあります。

入院した場合の流れ


日帰り入院


薬で一旦ちらされたものが主な対象です。

もともとの炎症が抗生物質でコントロールされたものであれば可能であり、一部の医療機関では日帰り手術が実施されています。

長期入院


症状が進行し緊急入院となった症例に対し、日帰り手術が提案されることは少ないと考えられます。

緊急手術で行われた虫垂切除の術後経過は、もともとの炎症の程度によってまちまちです。

術後3~4日で退院許可が出ることもありますが、壊疽性虫垂炎や汎発性腹膜炎を伴った虫垂炎となると、術後のキズの感染や離開、腹腔内に膿瘍形成(膿がたまること)で1カ月以上の入院となることもあります。

再発リスク


手術をしないで治療した患者さんが再び虫垂炎にかかる割合については文献によってまちまちですが、30~50%と推察されます。

最後に大橋先生から一言


初期症状のうちに治療することが賢明です。

急性虫垂炎が繰り返されることにより、仕事や学業の予定に大きな変更を余儀なくされた患者さんたちもみてきました。

必ず再発するというわけではありませんが、待機的虫垂切除は時間的拘束も少なく済み、術後経過不良のリスクも相対的に少ないので、検討されてもよいと思います。

(監修:医師 大橋直樹)

プロフィール

監修:医師 大橋 直樹