被害妄想とは
一般的に会話の中で「あの人被害妄想強いよね」と言われるような被害妄想と、精神・神経医学で言われる被害妄想とは少し違います。
医学で言う被害妄想とは、病的に強く、周囲が理論的に「そんなはずはない」と言っても説得できず、現実的ではない内容のものを指します。
被害妄想の特徴
一般的に言われる被害妄想
・「夜道で後ろから足音がする。誰かに付けられているかも?」
・「お財布がない!盗まれたかも?」
もしかしたらそういうことがあるかもしれないなと思えるような内容であり、「実はその足音はネコだった」「よく探したら財布があった」という場合にはあっさりと訂正されてしまうので、病的な被害妄想とは言えません。
病的な被害妄想
・「向かいの人が布団を布団たたきで叩いているのは、自分を殺してやるというメッセージだ」
・「テレビで自分の悪口を言っている」
・「悪の組織が電波を放出して私を病気にしようとしている」
・「誰かに毒を注射されている」
上記のように、どうしてそういった発想に至ったのか、正常人には理解できません。
■ 一次妄想
周囲の人がそんな訳ないと説明したり、先ほどの「誰かに毒を注射されている」を事例にすると、「具体的にどうやって毒を注射するの?できる訳ない」と理論の穴を追及しても、本人は疑いを持ちません。
このような突飛な妄想を一次妄想と言います。
■ 二次妄想
「職場で自分は迷惑がられている」「お嫁さんが私を追い出そうとして財布を隠した」といった、理解できなくはない妄想を二次妄想と言います。
病的な妄想は周囲がいくら「そういう事実はない」と説得してもくつがえされません。
被害妄想に関係する病気
病的な被害妄想が見られる病気は以下が挙げられます。
・統合失調症
・妄想性障害
・妄想性パーソナリティ障害
・うつ病
・躁うつ病(双極性障害)
・認知症
・様々な脳疾患
「いじめられているかもしれない」「嫌われているかもしれない」といった、人間関係に関する妄想については、本当かどうか確かめようがない部分もあり、病的な妄想なのか一般的な意味での被害妄想なのか、それとも事実なのかは線引きが難しいところもあります。
被害妄想は病院で治療できる?
検査
病的な妄想かどうかは、医師との面談や必要に応じて血液検査や脳の画像検査などを行って総合的に判断します。
治療
病的妄想であれば、診断名により抗精神病薬や抗うつ剤での治療が有効な場合があります。
また、考え方の訓練や呼吸法、瞑想法を指導し、考え方の癖を治す認知行動療法を取り入れたカウンセリングなどを受けることもできます。
被害妄想やマイナス思考の改善方法
事例
自分が食堂で同僚グループの近くを通ったら、くすくす笑い声がした。
自分)
「自分のことを笑って馬鹿にしている。嫌な気分だ」と考える。
↓
「自分を馬鹿にしている」という意味づけをし、不快な感情を大きくしているのは自分自身。
事実)
「笑い声がした」ということだけ。
事実と自分の中での意味づけを分けて考える
ただ事実だけを受け止め、余計な意味づけをしないようにして受け流します。
不快な意味づけや感情が浮かんできそうになったら、目を閉じて深呼吸をするなどして気持ちを切り替え、自分の中のマイナス感情にエサをやらないようにします。
最後に医師から一言
被害妄想は、病的であっても病的でなくても、本人も苦しく、加害者扱いされる周囲の人にとっても不快なものです。
介護施設などでも、心を込めて介護しているスタッフが、入居者の被害妄想で「乱暴された」「財産を取られた」など加害者扱いされて疲弊するという例が多く見られます。
解決は簡単ではないですが、事実関係の把握が重要です。
(監修:Doctors Me 医師)