皆さんは、比較的日本人に多いと言われている、先天性の唇の奇形「口唇口蓋裂」という疾患をご存知でしょうか?
妊娠中に検査で発見することができ、生後数カ月後から治療が可能なので、早期発見・早期治療により合併症などのリスクを避けることができるそうです。
今回は、口唇口蓋裂の原因・症状・治療方法を、小児科医の武井先生に分かりやすく解説をしていただきました。
目次
口唇口蓋裂とは
上あごとよばれる口蓋と唇が左右でうまく結合せずに、裂け目が入り割れている先天性の奇形です。
日本人は他の人種の方と比べて発症率は高く、おおむね500人に1人程度の割合で見られます。
(※注:画像は赤ちゃんの唇のイメージです)
口唇口蓋裂はいつ分かる?
赤ちゃんがお腹にいる時点で判明することが多いです。
妊娠の2~3カ月頃にそれぞれの臓器ができ始めて、胎盤ができる妊娠5~6カ月頃には目・鼻・口などの顔面が完成していきますので、妊娠20週以降の超音波検査で判明します。最近の超音波は性能が高いので発見されることが多いです。
口唇口蓋裂の原因
7〜8割程度は不明とされております。他の内臓や体表の奇形を伴う遺伝子・染色体異常に合併する症例もあります。
その他の原因として推定されているものは、環境要因として妊娠中の喫煙や遺伝的な要素が考えられていますが、特定することは困難であります。
口唇口蓋裂の症状
体の発育の問題
新生児期では哺乳を行うことが困難であることから体重増加不良・脱水・低栄養になる可能性があります。
言語発達の遅れ
3〜4カ月頃では声をうまく発することが難しいために言語発達の遅れる事があります。
耳・鼻・喉の疾患
鼻と口がつながっている状態が続くと、乳児期より中耳炎・扁桃炎・誤嚥性肺炎の原因となります。
口唇口蓋裂の治療・手術方法
出生してから成人までに何回か外科手術が行われます。
生後3〜4カ月
生後3〜4カ月までにはテープで固定をして唇を左右を閉じる手術が行われます。
1歳頃
言葉を発する生後1歳頃からは口蓋の手術を行い、言語療法を継続して正しい発音方法を理解させます。
1歳6カ月〜2歳
歯並びにも影響が出る事がありますので、歯が生えそろう1歳6カ月〜2歳より矯正治療が実施されます。
2歳以降〜成人
身体の成長に合わせて数回に分けて唇などの外見的な手術が行われ、成人になるまで多角的なフォローアップが実施されます。
口唇口蓋裂は大人になってからも治せる?
口唇口蓋裂は成人になってからでも治療は行われますが、前述のように正しい発音や嚥下機能への障害、耳鼻科領域の合併症(中耳炎など)のリスクがあります。
そのため、小児期からの治療はメリットが大きいと考えられます。
子どもの口唇口蓋裂のリスクを減らすには?
口唇口蓋裂のリスクを避けるために妊娠中にできる事としては、以下が挙げられます。
・禁煙
・過度なカフェイン摂取を避ける
・臓器を作っている妊娠初期は無理をせずに体を休ませる
・胎児に奇形を起こしえる内服薬を中止する
最後に武井先生から一言
口唇口蓋裂のお子さんの見た目に驚かれる親御さんは多いと思います。中には、自分が悪いのでは…と責めてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、口唇口蓋裂は小児科から成人になるまで、形成外科・耳鼻咽喉科・矯正歯科・スピーチセラピスト(ST)などの専門医との関わりによって、言語障害・嚥下障害などを起こさず日常生活に支障がないレベルに治療することが可能となってきています。
多くの専門医のサポートと共にお子さんも成長していきますので、温かく見守ってくださいね。
プロフィール
- 監修:医師 武井 智昭
- 慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。