お笑いコンビ「藤崎マーケット」の田崎佑一(36)さんが、腎臓に腫瘍が見つかり、11月22日に手術を受けていたことが分かりました。早期発見だった為、腹腔鏡手術で左腎臓の部分切除後は順調に回復をしており、今週には退院予定とのことです。(参考)

 

働き盛りの30代男性を襲った腎細胞がん、一体どのような要因があるのでしょうか?

 

今回は、腎細胞がんについて原因・症状、早期発見する為の検査方法や予防法を医師が丁寧に解説します。

 

目次

 

 

腎臓にできるがんの種類

腎臓 

腎細胞がん

尿を作る腎臓本体にできるがん

 

腎盂がん

できた尿を運ぶ経路である腎盂に生じるがん

 

腎芽腫

Wilms腫瘍、ウイルムス腫瘍。子どもの病気であり胎児期の未熟な腎臓組織から発生するがん

 

がん以外の腫瘍

・腎血管筋脂肪腫(腎過誤腫、angiomyolipoma、AML)

・腎嚢胞などの良性腫瘍

 

 

腎細胞がんの原因

細胞 

どのがんでも、原因は細胞分裂の際に起こる遺伝子の異常です。細胞は、必要な時に必要なだけ増殖し、必要なければ死んでいくという秩序を持っています。

 

細胞増殖の際には遺伝子をコピーして細胞を複製しますが、その際にエラーが生じ、エラーを監視するシステムをすり抜けると、無秩序に増えて死ににくい細胞が生まれることがあります。これががんです。

 

遺伝子のエラーは常に生じており、我々の体内には毎日数個のがん細胞が生まれていると言われていますが、免疫システムやチェック機能が作動して、大きくなる前に排除しています。

 

遺伝子のエラーを起こしやすくする要因

・タバコ

・紫外線

・放射線

・発がん性を持つ化学物質(アスベスト、有機溶媒、重金属など)

 

遺伝子のチェック機能の精度を下げる要因

■ 遺伝

生まれつき持っている遺伝子の変化があげられます。いわゆるがん家系や家族性がんと言われるものでは、がんに対抗するために必要な遺伝子に生まれつき異常があると言われています。

 

von Hippel-Lindau病と呼ばれる遺伝性の病気の患者では、その2/3に腎細胞がんが見られると言われています。

 

■ 肥満、高血圧

肥満高血圧があると腎細胞がんになりやすいと言われています。

 

 

腎細胞がんの発生率

30代男性 

腎細胞がん自体が全てのがんの1%程度しかない、珍しいがんであり、30代で腎細胞がんになるのは非常に珍しいことと言えるでしょう。

 

特に「これがあると30代でも腎細胞がんになる」というはっきりした原因はありません。

 

 

腎細胞がんの症状

背中が痛い 

初期は自覚症状がなく、たまたま検査を行った際に見つかるということもあります。

 

がんが進行した時の症状

・発熱

食欲不振

・体重減少

貧血

・脇腹から背中にかけての痛み

 

血液に関わる症状

■ 赤血球の増加、血中カルシウム濃度の上昇

 赤血球やカルシウムが増えすぎるのは、がんが赤血球・カルシウムを増やすようなホルモンを放出することがあるためです。

 

■ 陰嚢の腫れ、血管が目立つ

がんが腎臓に流れ込む血流を妨害することで、わだかまった血液によって陰嚢が腫れたり、お腹の表面の血管が目立つこともあります。

 

 

腎細胞がんになりやすい年代・性別

50代男性の喫煙 

年代

腎細胞がんは50〜70代に多く、年齢を重ねるごとになりやすくなります。

 

性別

男性は女性の2〜3倍腎細胞がんになりやすいとされています。

 

 

腎細胞がんを早期発見するためには?

CT検査

 

大きながんだと触って分かることもありますが、腎臓は背中側にあり周囲に脂肪や筋肉が詰まっているため、何気なく触って分かることはまずありません。

 

腎細胞がんを発見するには、以下の検査方法があります。

 

尿検査

がん細胞が増えたり壊れたりする際に血管を破り出血することで、尿に微量の血が混じり、尿検査で異常が発見されることもあります。尿に混じりこんだがん細胞を顕微鏡で発見することもあります。

 

しかし、尿検査、血液検査は職場の健康診断でも行われますが、これだけだと腎細胞がんを見逃すこともありえます。

 

超音波検査(エコー)、CT、 MRI

腎細胞がんを見つけたいという場合には、超音波検査(エコー)、CT、 MRIが有効です。

 

 

腎細胞がんの生存率 

円グラフ 

転移がない場合

腫瘍の大きさが7cm以下:90%

腫瘍の大きさが7cm以上:70%

腫瘍が腎臓の周囲にはみ出している:50%

 

転移がある場合

5年後の生存率は20%

 

 

腎細胞がんの治療法 

腹腔鏡手術

 

手術でがんを取り除くことが基本です。片方の腎臓をまるごと切除する場合もあれば、がんの周囲だけ切除することもあります。

 

腎臓は左右二つあるため片方取っても普通の生活ができます。手術の際にはお腹を切る方法と、細いカメラを入れて小さい傷口から操作する腹腔鏡手術やロボット手術があります。

 

腎細胞がんは抗がん剤や放射線治療が効きにくいがんと言われますが、手術と合わせて行われることがあります。

 

 

腎細胞がんの予防法 

高血圧・禁煙予防 

肥満や血圧の管理をすること、喫煙を避けることが考えられます。

 

家族に腎細胞がんが多かったり、von Hippel-Lindau病と分かっている家族がおり、自分にも遺伝子の異常がある可能性が考えられる場合は、定期的に画像検査を受けるのが良いでしょう。

 

 

最後に医師から一言

顕微鏡検査 

腎臓に超音波検査などで影が見つかった場合、腎血管筋脂肪腫などとの見分けが必要になります。

 

しかし、腎細胞がんは血流が多く、針を刺して組織を顕微鏡でみる生検を行うと出血したり転移するリスクがあるため、とりあえず手術して、取れた腫瘍を顕微鏡で見て診断をつけるということがあります。

 

(監修:Doctors Me 医師)

 

 

参考文献

国立がん研究センター

愛知県がんセンター中央病院