野菜の切り方や火の入れ方といった調理法しだいで、摂取できる栄養が大きく異なることをご存知ですか?
野菜を食べているだけで、栄養を摂れているつもりになっていたらもったいない! 調理法を工夫すればもっと多くの栄養を引き出すことができるのです。
今回は栄養士の横川先生に、野菜の栄養を余さずおいしく活用する方法と、とっておき簡単レシピを教えていただきました。
野菜の栄養をムダにしがちなケーススタディ5つ
野菜の栄養をムダにしてしまいがちな5つの調理法を紹介します。以下のような調理法を避け、野菜の栄養を十分に引き出せるようにしましょう。
1.栄養の多い部分を捨ててしまっている
野菜の皮や根にはファイトケミカルという植物由来の機能性成分が豊富。よく耳にする抗酸化作用で有名なポリフェノールもファイトケミカルのひとつ。
玉ねぎの皮は捨ててしまいがちですが、皮には「ケルセチン」というポリフェノールの一種が多く含まれているため、皮を煮だして皮茶にするのもいいでしょう。
2.長時間流水で洗うと栄養素が流れ出てしまう
レタスなどでサラダを作る場合、衛生面などを考えて流水でしっかり洗い過ぎると、水溶性の栄養素が流れ出てしまいます。
特に千切りにしてから洗うのはNG。「切らずに、さっと洗う」を心がけ、洗った後にカットするのがいいでしょう。
3.ノンオイルドレッシングが合わない野菜もある
もしサラダににんじんなどのβカロテンを豊富に含む食材があれば、ノンオイルではなくオイル入りのドレッシングをチョイスするとgood。なぜならβカロテンは油と一緒に摂ることで吸収率がアップするからです。
4.生野菜ばかり食べているのは考えもの
茹でてしまうと水溶性の栄養素がなくなると思って生野菜ばかり食べているのは残念!
生野菜は一見ボリュームがあるようですが、実際の量はそこまで多くないため食べれたつもりで必要量をしっかり摂れていないことも多いのです。
また、野菜を茹でて食べるのであれば、洗うときに水につけすぎないようにし、小分けして茹でることで加熱時間を短縮するといいでしょう。
5.あく抜きはほどほどに
実は、野菜の「あく」は抗酸化作用が期待できるポリフェノール類です。
切った野菜を水の中に3分ほどつけるだけでも、水溶性ビタミンは溶けだしてしまうため、あくが強い山菜以外はあく抜きしなくてもOKです。そのため、アク抜きで有名なナスやごぼうもそのまま調理して使うと良いでしょう。
ここがポイント! 野菜の栄養を引き出す調理法
野菜の栄養を引き出す7つのポイント
・皮ごと使う。皮をむく場合は薄くむく
・βカロテンが豊富な緑黄色野菜は油と一緒に調理する
・あくが強い山菜以外はあく抜きせず調理する
・栄養価が高い旬の野菜を選ぶ
・オイル(ドレッシング)や酢など利用して吸収率をサポート
・残った皮や茎、芯などは煮出してつくる皮茶・出汁(べジブロス)にして利用
・食材に合わせた調理法を知る
食材によっての調理例
・白菜
白菜を料理に使う場合、細かく切ると栄養素が流れ出てしまうため、ざく切りにする。また栄養が豊富な中心部分から使うことで白菜のうまみ成分であり、疲労回復成分でもあるグルタミン酸を効率よく摂ることが可能になります。
・にんじん
にんじんに含まれるβカロテンは、皮の部分では他の部分のおよそ2.5倍多く含まれているため、皮ごと使うことで効率よく摂ることができます。
さらに、細胞壁が柔らかくなる加熱料理、βカロテンとの相性がよいオイルを合わせたメニューにすることで吸収率アップが期待できます。
・ほうれん草
ほうれん草を茹でる場合は、切ってから茹でてしまうと水溶性の栄養素の約4割が流れ出てしまうとされています。
そのため、茹でてから切るのがオススメ。また赤茎ほうれん草はあくが少ないのであく抜きせずに調理してOKです。
栄養をたっぷり摂れるかんたんレシピ
電子レンジで簡単!春キャベツの温玉のっけスープ
【材料1人分】
・春キャベツの葉(大) 1枚(47g)
・ぶなしめじ 1/4パック(45g)
・ウィンナー 2本
・卵 1個
・コンソメ顆粒 小さじ1
・水 150ml
・塩、こしょう 各少々
【トッピング】
・刻みパセリ 適量
【下準備】
適量のパセリを刻んでおく。
【作り方】
1. キャベツはざく切り、ぶなしめじは石突きをとってバラバラにしておく。ウィンナーは食べやすくカットする。
2. 耐熱カップにキャベツ、しめじ、ウィンナー、水、コンソメを入れ、卵を割り入れる。
3. 卵の黄身を楊枝で3回刺し、ふんわりラップをして電子レンジ(600ワット)に5分30秒ほどかける。
4. 具材が柔らかくなったらラップを外して、お好みで塩、こしょう、刻みパセリをトッピングする。
※電子レンジのワット数や加熱時間はご家庭のものをご確認ください。
【ポイント】
キャベツをスープにすることで、汁に流れ出た水溶性の栄養素であるビタミンCやビタミンU(キャベジン)が摂れやすくなります。
また、ウィンナーを入れることで、ウィンナーの油によってキャベツに含まれる脂溶性のビタミンK、パセリに含まれるβカロテンの吸収率アップが期待できます。
お好みで少量のオリーブオイルを入れてもよいでしょう。
最後に横川先生から一言
野菜を食べること以外に「どんな野菜を食べているのか?」も大切です。野菜の質や調理法によって、栄養素が少ない状態の食材を食べていれば、なかなか気になる症状が改善されないケースも多いからです。食べるなら少しでも効果的な食べ方を知っておけるとよいですね。
また、皮ごと食べるのであれば、農薬の心配もあるので、信頼できるお店で購入されるとよいでしょう。
体内の細胞は日々新しいものに入れ替わっているため、必要な栄養素が不足してしまうすると、代謝のスピードが悪くだけでなく、肌荒れ、便秘といった症状のほか、慢性的な疲労感に繋がりやすくなります。野菜をうまく使って栄養をムダなく摂れるとよいですね。
参考資料
・東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部(2017)『その調理、9割の栄養捨ててます!』,世界文化社
・渋川祥子 (監修)・牧野直子 (監修)(2014)『「おいしい!」を解き明かす 料理と栄養の科学』,新星出版社
・まさかの事実!野菜の「栄養がなくなっちゃう」NG調理法4つ
・野菜の栄養、茹でるとなくなるは本当?茹で野菜のメリットを紹介
プロフィール
- 監修:栄養士 横川 仁美
- 食と健康・美容を繋ぐ「smile I you」代表。 お味噌汁レシピ研究家×薬機法に強いセールスライター。 管理栄養士を取得後、保健指導や重症化予防、ダイエットサポート、電話相談のカウンセリング等を通して、のべ2000人の方の食のアドバイスに携わる。現在はコラム執筆・監修、レシピ作成、オンラインでのダイエットカウンセリングを中心に活動。 薬機法・景品表示法・健康増進法の知識も生かしながらさまざまなライティング活動を行っている