店舗の営業再開や職場出勤など、少しずつ外出する機会が増えてきました。それでも、まだ新型コロナウイルス感染症の脅威は消えてはいません。

 

職場や家庭での予防感覚や対策に対する考え方の違いが「感染してしまうのではないか」という不安感につながっていることもあるようです。

 

目次

 

命のリスクにかかわる予防感覚に違いが生じる理由

新型コロナウイルス感染症が拡大したとき、多くの人が予防意識を高めました。

 

しかし緊急事態宣言が解除されると、感染予防に対して楽観視をする人も出てきました。

 

今も、予防に関しては温度差が広がりつつあることは否定できません。

 

健康な人と病気が身近にある人の危機意識は違う

このような感染予防に対する意識の違いの理由の1つは、個人の危機管理に対する考え方が異なることがあげられます。

 

例えば、もし自分が感染しても「自分は基礎疾患もないし、治療で回復する人もいるから大丈夫だろう」と気楽に考えて、一般的な感染予防すら行わない人もいます。

 

ただ、このような人は、自分が感染したときに周囲にどのような影響を与えるかを想像していません。

 

 一方、過去に近親者などの大切な人を感染症で亡くした経験がある人は、感染症には最大限警戒するでしょう。

 

さらに、身近に高齢者や子どもなど、新型コロナ感染症にり患すると重篤化する可能性がある人は、より注意します。

 

「清潔」の感覚は日常生活の経験から

また、清潔に関する概念も個人によって異なります。

 

例えば、料理や掃除を自分で行う人は、普段から清潔や不潔の概念を考えるクセが身についていますが、そのようなことをあまりしない人は、清潔に関して考える経験が乏しいので、感染対策もおろそかになります。

 

このように、今までの人生で自分が体験したことや、他の誰かから見聞きしたことが自分の価値観として作られていき、たとえ命に係わるような感染症に対してであったとしても、意識のズレが起こるのです。

 

 

家庭と職場、どんなトラブルが起きる?

家庭でのトラブル例

家庭内のトラブルとしては、夫婦での清潔の感覚が異なる時に起きやすいです。

 

例えば、夫が買い物などの外出から帰ってきて手洗いはするものの、そのあとに顔や頭を無意識に触っていたとします。

 

妻は、夫がその手で家のパソコンなど触っていることが気になって注意します。夫としては、無意識でやっていたことであり、「そこまで言うほどでもないだろう」とムキになって言い争いに発展することがああるかもしれません。

 

「コロナ離婚」問題の夫婦関係は修復できる?アフターコロナのために今できる対策

 

職場でのトラブル例

普段はマスクをしている社員が電話対応や会議で発言するときに、声がこもるのを防ぐ理由からマスクをずらして会話する光景があります。

 

しかし、それではデスクの周りに飛沫が飛び散ります。それをまた手で触るリスクもあり、職場で集団感染が起きる可能性もあります。

 

マスクをずらした社員としては相手に少しでも聞き取りやすいようにと職務の円滑な遂行を考えた上での行動です。感染予防の観点から自分の行動を注意されるのは理解ができるものの、しっくりこずに、人間関係に摩擦を生むこともあります。

 

「上司に怒鳴られた」これってもしかして…?施行されたパワハラ防止法を知ろう!

 

予防意識の違いでストレスをためないようにするには?

感染予防に対する価値観は人によって違うので、それぞれのコミュニティで考え方をすり合わせていく必要があります。

 

家庭や職場で具体的かつ実践可能なルールを決めて、守ることができない場合は上下関係なく注意することも大切でしょう。

 

それは、「新型コロナウイルス感染症にり患しない」「感染を拡大させない」といった目標のもとに、自分たちの生活や命を守るために行われる予防のための行動をお互いに意識する機会を増やしていくことになります。

 

とはいっても、いきなりガチガチなルールで縛ってしまうと、息苦しくなって軋轢を生むので、まずは出来る範囲から始めていきましょう。

 

例えば、家庭では「外出から帰ったら、手洗い、手指消毒、うがいは必ず行う」・「トイレから出た後は、手洗い・手指消毒を必ず行う」などのルールからでいいと思います。

 

それがクリアできたら、さらに「家にいるときは、首から上(顔や髪の毛)を触らない」などのルールを追加していきましょう。

 

また職場では、「喋るときはマスクをする」といったシンプルなルールからで構いません。

 

このルールが守れていることが確認できたら「ドアノブ、階段の手すりなどの不特定多数の人が触る場所を定期的に消毒する」などさらなるルールも実行して、みんなで感染予防に参加する意識を持ってもらってください。

 

 

まとめ

どうしても、感染予防の価値観は個人によって異なってきます。だからこそお互いに歩み寄る必要があります。

 

まずは具体的で実践可能なルールを共有して、互いに力を合わせて感染対策に取り組んでいきましょう。

 

そうすることで、同じ方向を向いている意識が感じられてきて、ストレスの原因となっている予防意識のズレも少しは解消できるかもしれません。

 

【新型コロナの最新情報を網羅!】症状や感染経路、感染判断の目安

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。