年末年始でついつい美味しいものを食べ過ぎ、高脂質な食生活になってはいませんか。“Stay Home”な今こそ自分の食生活を見直してみましょう。

 

今回は、脂肪の消化・吸収を助けるのに必要不可欠なものとして注目されている胆汁酸について紹介します。

 

目次

 

胆汁酸とは

胆汁酸(bile acid)は、肝臓でコレステロールから合成される胆汁の主成分です。肝臓で作られた胆汁酸を一次胆汁酸といい、腸管で微生物による影響を受けて合成されるものを二次胆汁酸といいます。

 

胆汁の中でも重要な役割を果たすと言われている胆汁酸は、腸に入ってきた脂肪を消化・吸収しやすい形に変化させる働きをしています。脂肪は消化や吸収に時間のかかる成分なのですが、そのサポートをしてくれるのが胆汁酸なのです。

 

また、胆汁酸は水に溶けない脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)の吸収を助けたり、コレステロールの生成を調節したりもしています。

 

 

胆汁酸が不足するとなにが起きる?

胆汁酸不足による症状

 

日頃から脂肪分を多く摂取する人は胆汁酸が不足しやすくなります。

 

肝臓はその不足分を補うためにさらに胆汁酸を作ろうとしますが、一日に生産できる胆汁酸の量は限られています。そのため、肝臓に大きな負担をかけてしまうとともに、脂肪が十分に消化・吸収されずに体内に溜まってしまうのです。

 

そうなると、便秘下痢などの症状だけでなく、食欲不振むかつきなどが現れることも。加えて、胆石症や肝疾患などの病気を引き起こす可能性も高くなります。

 

参考:

胆汁酸と疾病

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim1997/11/2/11_2_69/_pdf 

 

 

食生活の変化と高齢化で増加?胆石症とは

胆石ができるメカニズム

 

 

現在、日本の総人口のおよそ10〜15%にあたる方々が胆石の症状を持っているとされています。

 

食事での脂肪分の取り過ぎによって胆汁内でコレステロールが固まり、少しずつ大きくなって石のようになります。この塊が胆のうに溜まることで胆石症を発症します。

 

自覚症状がない人も中にはいますが、右側の肋骨の下辺りやみぞおちに激しい痛みを感じるのが胆石症の主な特徴です。

 

胆石の大きさや溜まる位置によって治療法が異なり、外から衝撃波で圧力をかけて石を砕く方法と手術で直接取り除く方法があります。痛みがない場合は飲み薬で石を溶かして治療することができますが、痛みが激しい場合は、まず痛みを抑える薬を服用し症状を和らげてから治療を始めます。

 

脂っこい食べ物などの脂質が多い食事やアルコール摂取などによって、胆石の原因となるコレステロール量も増加します。

 

食後の腹痛は危険?アラフォー女性に多い「胆石症」の原因と症状

 

参考:

公益財団法人 日本学校保健会

http://www.hokenkai.or.jp

よくわかる最新医学 肝臓病

病気がみえる①消化器

 

 

胆汁酸を増やして分泌サイクルを促すには?

胆汁酸の95%は腸から再び吸収されて体内を循環します。胆汁酸の一日生産量には上限があるので、「古い」胆汁酸を排泄して「新しい」胆汁酸を血中に増やすことが求められます。

 

「古い」胆汁酸を排泄するには水溶性の食物繊維が不可欠です。そして「新しい」胆汁酸の分泌を促すには、胆汁酸と結びつくグリシンやタウリンなどのアミノ酸が必要です。これらの栄養素を摂取することで胆汁酸のサイクルを回すことができます。

 

参考:

腸肝循環:胆汁酸サイクルを中心に

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/47/1/47_41/_pdf

 

 

胆汁酸サイクルを回すオススメの食べ物・食材

最近では胆汁酸の質を良くすることが脂肪の消化・吸収を促すだけでなく、ダイエットや美容にも良い影響を与える可能性があることがわかってきました。では、どのような食事が質の良い胆汁酸を合成し、その分泌を活発にさせるのでしょうか。

 

まずおすすめしたい食材としては「大麦」「マイタケ」「海藻類」「こんにゃく」です。これらは水溶性の食物繊維を多く含み、古い胆汁酸の排泄を促す効果が期待できます。

 

胆汁酸を含む海藻類

 

もずくやわかめ、海苔などの海藻類はスープや和物などの副菜に、大麦はいつも食べているご飯に一割ほど混ぜ込むだけで毎日簡単に取ることができます。

 

胆汁酸を含む魚介類

 

また、新しい胆汁酸と直接結びつくアミノ酸・グリシンやタウリンを多く含む食材は魚介類です。特にアジやサバなどの近海魚、ブリ、カツオなどの血合の多い魚類、あさりやしじみなどの貝類がいいでしょう。

 

これらの食材でメインのおかずを作ることはもちろん、缶詰などでも簡単に取り入れることができ、いつものおかずにもう一品プラスしたりするのもおすすめです。

 

食物繊維とアミノ酸の食材を主食、主菜、副菜に上手に取り入れることで質の良い胆汁酸を合成し、分泌サイクルを活発にすることができます。日頃の食事に一工夫加えてみてください。

 

 

まとめ

胆汁酸は脂肪の消化・吸収・排泄といったすべての過程に用いられ、コレステロールの代謝に関わる重要な働きをしています。胆汁酸の分泌を促すことは、脂肪の吸収をスムーズにするだけでなく、病気を予防する効果も期待できるかもしれません。

 

何らかの症状が出てからではなく、まずは日々の生活の中で暴飲暴食を避け、脂肪の取りすぎに注意するようにしましょう。その上で、今回紹介した食材や食べ物を積極的に取り入れてみてください。

 

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プロフィール

監修:栄養士 馬場朝美
管理栄養士。小学校で栄養教諭・家庭教諭として児童の栄養管理、教育センターでの教育研究、地域での食に関する講演会の講師などを務める。その後海外に渡り、貧困家庭などを対象にした栄養カウンセリング活動や食に関する研究を行う。栄養教諭免許(第一種),フードコーディネーター2級。