2020年に日本で新型コロナウイルス感染が判明してから、約1年が経過しました。

 

新型コロナウイルス感染症のリスクや臨床経過なども判明してきており、海外ではついに新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されました。日本においてもワクチン接種が随時開始となります。

 

目次

 

 

新型コロナウイルスワクチンの接種状況と見通し

新型コロナウイルスワクチンの接種

 

2020年の12月2日、国会で予防接種法が改正されました。

 

新型コロナウイルスワクチンの接種に関しては、国が接種を勧奨するとともに接種費用を国側が支払うという「臨時接種」となりました。また、ワクチン接種は国民の努力義務ということになり、接種の義務や接種を行わないことによる罰則はありません。

 

同時に、国は優先接種対象者を選定しました。これまでの新型コロナウイルス感染症における重症化リスクが高い方と、医療提供体制の維持・確保を踏まえて以下の順で実施していくことになります。

 

A:医療従事者等への接種

2月中旬より国立病院機構や労災病院系統で医療従事者の接種が開始されました。

 

B:65 歳以上の高齢者

3月中旬ころから、接種対象者に各市区町村よりクーポン券などが郵送される予定です。並行して医療機関では接種準備が進められ、ワクチンの海外からの入荷や本数などが判明した時点で予約開始となります。

 

現時点では4月中旬ころから開始、5月には本格的な接種が計画されております。

 

C:高齢者以外で基礎疾患のある人、高齢者施設(障害者施設を含む)などで働く人

 

この順番で接種を進め、その後に16歳以上の方を対象に接種が受けられるようになる見込みです。

 

新型コロナ症状を悪化させる持病とは?死亡リスク(致死率)との関係も解説します。
厚生労働省「新型コロナワクチン接種についてのお知らせ」

 

 

ワクチン接種の効果って?発症予防と感染予防

ワクチン接種の効果

 

ワクチンとは、特定の病原体に対して免疫を獲得させるため、対象となる病原体を弱毒化、あるいは死滅させた病原体の成分を注射する生物学的製剤の一種です。

 

これまでのワクチンは死滅させた病原体の成分を用いるものを不活化ワクチン、病原体を弱毒化したものを生ワクチンと分類し、ワクチンによりターゲットとなる病原体に対しての免疫をつけるというメカニズムが一般的でした。

 

これまでにない仕組みを活用した新型コロナワクチン

新型コロナウイルスにおいてはこれまでとは異なる、細胞にシグナルを送るmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、DNAワクチンなどが用いられます。RNAやDNAは細胞の核や細胞質の中に存在していて、遺伝やタンパク質の合成に作用する物質です。

 

仕組みを簡単に説明すると、まず新型コロナウイルスの遺伝情報を筋肉内注射で体内に取り込み、その遺伝情報をもとにタンパク質が作られます。そして免疫を担当するリンパ球によって、そのタンパク質に対する免疫反応が起きるようにするわけです。

 

新型コロナウイルスは、血管などにあるヒト細胞上のアンギオテンシン転換酵素2(ACE2)と結合することで感染が成立します。このワクチンにより生成された抗体は、ACE2へのウイルスの結合を阻止して感染予防の効果を発揮するのです。

 

新型コロナワクチンの予防効果は?

ファイザー社のmRNAワクチン(コミナティ)は、第Ⅲ相臨床試験報告によると有効率90%以上という優れた成績が示されました。この「90%」というのは「発症のリスクが10分の1になった」という発症率低下を意味します。

 

90%の人には有効で10%の人には効果がない、接種した人の90%はかからないが10%の人はかかるという意味ではありません。

 

今回の有効率はCOVID-19発症を指標としたものです。ワクチンを接種しても、PCR検査で陽性となる無症状患者の「不顕性感染」「無症状病原体保有者」となりえることはあります。

 

 

新型コロナワクチン、副作用やアレルギー反応は?

新型コロナウイルスワクチンの副作用

 

新型コロナウイルスワクチンで用いられるmRNAは分解されやすく長期間細胞内に残存することはない上、ヒトの染色体の遺伝子に組み込まれることはありません。つまり、比較的安全性は高いことが予想されます。

 

その一方で、mRNAを用いたワクチンは初めての試みであり、今後繰り返し投与する場合の安全性はまだ確認されておりません。

 

なお、これまでに報告された副作用には以下のようなものがありました。

 

局所的な痛み(疼痛)

ファイザー社のワクチン接種時には、活動に支障が出る中等度以上の局所反応(疼痛)が、1回目接種後の約30%、2回目接種後の約15%で見られたということでした。また日常生活を妨げる重度疼痛の発生が、1回目で0.7%、2回目で0.9%報告されています。

 

発熱

38℃以上の発熱は 1回目の接種時にはほぼありません。しかし2回目の接種後に10~17%の割合でみられています。発熱は高齢者よりも若年群で頻度が高い傾向があり、免疫誘導による反応と推定されております。

 

アナフィラキシー

また海外での報告ですが、1回目の接種直後にアナフィラキシーの報告が比較的多くありました。

 

米国での当初の調査では、接種100万回あたりのアナフィラキシーの頻度がファイザー社のワクチンで11.1%、モデルナ社のワクチンで2.52%であり、すべてのワクチンでの1.31%に比べて高い割合となっています。

 

ワクチン接種で注意をしたほうがいい人とは?

アナフィラキシーの既往歴がある方の割合は38.7%であり、過去にアナフィラキシーなどのアレルギー症状を起こした方のワクチン接種には十分に注意する必要があります。

 

一方アナフィラキシーの発症には人種差があり、白色人種に多いとされています。日本では2万回の接種が医療従事者で実施されましたが、アナフィラキシー症例はまだ報告がありません。

 

 

まとめ

新型コロナウイルスワクチンの普及が進み、高齢者や基礎疾患がある方のワクチン接種割合が増加すれば、新型コロナウイルス感染症の重症例の減少が期待できます。

 

その一方で、新型コロナウイルスにも変異があること、ワクチンの効果持続に関してはまだ不明なところがあるのも事実です。引き続き、感染予防策は継続していくようにしましょう。

 

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プロフィール

監修:医師 武井 智昭
慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。