机の角に肘をぶつけた時や寒い時などに、手がしびれたり震えたりした経験をされた人は多いのではないでしょうか?
一過性の症状であれば気にも止めないのですが、明らかに原因が分からない症状が続く場合は、早めに病院を受診することをおすすめします。
今回は、その症状と原因について医師に解説をしていただきました。
原因
「しびれ」という言葉は、「動かない」「麻痺している」という意味や「触っても感覚が分からない」という意味で使うこともあれば、「ビリビリとした異常な感覚がある」という意味で使用されることもあり、あいまいな言葉です。
動かすことは、脳の運動中枢→脊髄→末梢神経→筋肉という回路で行われており、感覚を伝えることは、皮膚→末梢神経→脊髄→脳の感覚中枢という回路なので、情報の流れが逆になります。
運動も感覚も両方に異常がある場合、末梢神経以降の問題の可能性が高いです。脳や脊髄では運動と感覚は全く別の経路を通っていますが、末梢では二つの経路は近いからです。ここでは異常な感覚がある場合の原因について考えます。
脳の問題
体の感覚を司る部位に、出血・梗塞など何らかの病気が起こるとしびれが起こります。脳梗塞などが落ち着いても、後遺症として現れる場合もあります。
手足を切り落としたあと、失った手足がしびれるような痛みを感じる幻肢痛という現象がありますが、これは脳が感じている幻のようなものです。
首の問題
首には、脊髄から手に信号を伝える神経が通っています。この神経は首の骨の細いすき間を通っており、頸椎ヘルニアや頚椎症などで骨のすき間がさらに狭くなると、神経が押されてしびれが生じます。
細かい神経や血流の問題
■ 外的な刺激
皮膚を傷め神経を刺激するような薬品が付着すると、麻痺したような感じがある場合があります。
また、肘の外側には神経が皮膚に近い部位に通っており、ここをぶつけると手の先まで電気が走るような感覚があります。
■ ウイルス性の病気
帯状疱疹や口唇ヘルペスなどのウイルス性の病気では、神経をウイルスが刺激し、ピリピリ・チクチクする感じがすることがあります。
■ 骨折
骨折した場合に骨の近くを通っている細かい神経を損傷すると、ビリビリした感じがします。
■ 長時間の姿勢
正座を長く続けた時や、他人を腕枕して寝てしまったとき、片方の腕を圧迫した姿勢で寝てしまったときなど、神経の圧迫や血流の低下により、じんじんとした感じがします。
神経を締め付けるような構造がある場合、例えば手根管症候群などで起こる場合があります。
■ 糖尿病
手に行く血管の血流が悪い場合にもしびれが起こります。特に糖尿病では、手足先の細い神経に栄養を送る血管が詰まりやすく、靴下や手袋で隠れる範囲に起こりやすくなります。
原因
重いものを持ちすぎた、力を入れ過ぎた
筋肉に強い力を入れたあと、細かい作業をしようとすると、力の調節がうまく行かなくなり震えることがあります。
発熱時の悪寒、寒い時
筋肉を細かく動かすことで熱を作り出そうとします。
怒り、驚きなど強い感情の動きがあった時
「怒りに震える」「緊張で震える」といったことがあります。
加齢
年を取ると特にこれと言った病気がなくても震えが起こることがあります。頭、あご、唇、舌にも起こることがあります。じっとしている時にも、姿勢を作ろうとしたときにも起こります。
アルコール、タバコなどの薬物に対する中毒症や離脱症状
いわゆる「アルコール中毒」の人が、お酒が切れると体が震えるというのはよく知られています。
脳の病気
パーキンソン病、小脳の病気など、運動を制御する脳の部位に問題があると、じっとしている時や動こうとするときに震えが起こります。
震えがひどいと、自分の鼻と医師の指の間を、自分の指で行ったり来たりするといった単純な運動をしようとしても、指が震えてうまくできなくなります。
肝臓や腎臓の病気
アンモニアなどの毒性のある物質を体外に排出できなくなり、震えが出ます。じっとしている時よりも、姿勢を作ろうとした時にひどくなりがちです。
座った状態で両手をまっすぐ前に出し、手のひらを上に向けた姿勢を保とうとしても、どうしても羽ばたくように動いてしまう現象を「羽ばたき振戦」と呼びます。
甲状腺などホルモンの病気、自律神経の乱れ
ホルモンの異常でも筋肉の制御ができなくなり震えることがあります。更年期障害ではホルモン異常が自律神経のバランスを崩し、震えが起こります。
原因不明
文字を書こうとすると手が震える「書痙」、飲み物をコップに注ごうとすると震えるといった動作をするときに震えが出るといった症状があるが、原因不明の場合もあります。本態性震戦(本態性とは原因不明のこと)と呼ばれます。
病院に行く判断基準
原因は多様であり、診断や緊急性の判断は難しいです。程度が強いから・ビリビリの範囲が広いから重症というわけでもありません。明らかなきっかけがないのに症状がある場合は受診すべきです。
脳梗塞を心配される方が多いですが、指先だけなど狭い範囲でのしびれは脳梗塞の可能性は低いです。片手全体の場合は脳梗塞や脊髄の病気の可能性も出てきますが、逆に両手が同じぐらいの場合は脳梗塞の可能性は低いです。
専門科目
扱う科は神経内科・整形外科・内科・血管外科・皮膚科など様々ですが、かかりつけの科がなければまずは神経内科に受診するのがよいかと思います。
注意点
無理に力を入れたりしないようにし、料理など熱いものを扱う作業や運転はなるべく控えましょう。
最後に医師から一言
しびれや震えは多くの方が経験する症状ですが、原因は様々です。早めに診断を受け対策を考えましょう。
(監修:Doctors Me 医師)