みなさんは、「眼球使用困難症」について知っていますか?

 

多くの人は日常生活の中で特に意識しなくても、目でものを見ることができると思います。

 

しかし、これは誰もが当たり前にできることではないのです。

 

そこで今回は、眼球使用困難症について医師に解説していただきました。これを機に、より多くの人が眼球使用困難症のことを知ってもらえればと思います。

 

 

眼球使用困難症とは?

 

眼球使用困難症とは、視力や視野には特に問題はないものの、まぶたが自由に開け閉めできない・まぶしさを強く感じる・原因不明の目の痛みがあるなど、眼球の使用が困難な状態のことを指します。

 

眼球使用困難症は、現時点ではまだ正式な医学病名として認められていません。医学的分類というより、当該患者が何に不都合を感じているかという観点から* 名付けられました。

 

「眼球使用困難症」と名付けることで、症状を持つ人や一般の人々、医師にも情報を広げ、厚生労働省などにもサポート制度の整備を呼びかけていきたいという狙いがあるようです。

 

 

症状

 

症状やその程度は人によりさまざまですが、代表的な症状には以下があげられます。

 

・まぶたが自分の意志通りに動かず、目を開けたいのに開けられない

・素早いまばたきができない

・わずかな光でもまぶしく、外出時だけでなく室内でもサングラスやアイマスクが必要になる

・目に原因不明の強い痛みがあるときがある

 

このような症状の背景には、眼瞼けいれん、頭や首のケガ、化学物質過敏症、脳・精神科系の病気、精神科系の薬の長期使用、線維筋痛症など、さまざまな原因が考えられます。

 

 

患者さんが抱える苦しみとは?

 

眼球使用困難症には、決まった検査方法がありません。主観的な症状が多いため医師にも症状が伝わりにくく、原因が特定できない場合もあります。

 

そのため、ドライアイなど他の病気として診断され、その治療を受けても症状が改善しないこともあるのです。

 

また、視力や視野には問題がなく、眼球使用困難症の認知度も低いことから周囲の人には理解されにくく、「気のせいだろう…」とか「わざと言っているのだろう…」などと思われることさえあるのです。

 

さらに、日常生活で目を使うことが難しくても、視覚障害者としては認定されておらず、公的なサポートを受けることができません。

 

このような理由から、治療費が負担になったり、視覚障害者として生きていくことが難しいという現状があります。

 

 

どんな治療をするの? 

 

眼瞼けいれんという病気は、まぶたの開け閉めが自由にできない・まぶしさが起こることがあるという点で、眼球使用困難症の一部をなしていると考えられます。

 

眼瞼けいれんでは、眼瞼(まぶた)の筋肉が過剰に働いていると考えられるため、筋肉の働きを抑えるようなボツリヌス菌毒素をまぶたに注射する治療法があります。

 

この他にも、まぶたを上げるのを助けるような器具がついたクラッチ眼鏡が使用される治療もあります。

 

まぶしさに対しては、サングラスや遮光眼鏡を使用する場合があります。

 

 

何科を受診したらいい? 

眼球使用困難症かも…と思ったら、まずは眼科を受診してください。神経眼科という分野を専門としている医師であると、相談がしやすいでしょう。

 

ただし、眼球使用困難症は今のところ正式な病名ではないため、「あなたは眼球使用困難症です。」という診断を下されることはないと考えられます。

 

 

最後に医師から一言

 

眼瞼下垂・重症筋無力症・甲状腺眼症・ブドウ膜炎・ドライアイ・眼精疲労・涙道閉塞など、眼球使用困難症と似た症状を示す病気はたくさんあります。

 

眼球使用困難症かもしれないと思ったら、まずはそのような病気を除外することも必要です。眼科を受診し、医師に相談してみましょう。

 

参考資料

眼球使用困難症候群としての眼瞼痙攣 日本神経眼科学会