多くの人が睡眠の大切さを知っていると思います。しかし、その睡眠が十分に取れているかどうかを聞かれ、自信を持って『はい』と答えられる人は少ないのではないでしょうか。

 

さらに最近は、新型コロナウイルス感染症(covid-19)によって生活の環境が変わったり、不安になるトピックが増えたりしたことで、夜にぐっすり眠れない「不眠」に悩んで精神科を受診する人も増えてきました。

 

目次

 

あなたの症状は「不眠症」?睡眠に関する悩み

不眠症の症状

 

まず自分の症状が不眠症に該当するのかどうか、いまいち分からない人もたくさんおられます。

 

たとえば、大きなプレゼンの前日に「緊張して眠れない…」という経験をしたことがある人も多いかと思います。ただ、このように一日だけ眠れない夜があるというのは不眠症とはいいません。

 

一時的な緊張や時差ボケなどによって2~3日程度眠れなくなることを一過性不眠といいます。これは誰にでも起こるもので、決して病気ではありません。

 

一方、慢性的な仕事や家庭などのストレスが原因で眠れない日々が1~3週間程度続くなら、それは短期不眠と表現されます。さらに、一カ月以上眠れない日々が続くと長期不眠と表現し、この段階で不眠症という病名がつくことが一般的です

 

4つの不眠タイプ

また、眠れないという不眠の症状は4つに分けることができます。

 

入眠障害

布団に入ってもなかなか寝つけません。これは精神的な不安が強い時に起こりやすい症状です。

 

中途覚醒

夜中に目が覚めてしまいます。不眠のなかで最も多い症状です。

 

高齢になることで眠りが浅くなったり、夜にトイレが近くなるなどによることも多いです。ただ、目が覚めてしまったあとにすぐに眠れるようならとくに問題はありません。

 

早朝覚醒

予定よりも2時間以上も朝早く目が覚めてしまいます。高齢の方は必要な睡眠時間が短くなるのでよく見られます。そして、うつ病などの患者さんにもよくみられる症状です。

 

熟眠障害

目覚めたとき、睡眠時間はある程度確保しているのにぐっすり眠った感覚がありません。これは精神的な原因によることもありますが、睡眠時無呼吸症候群などの可能性もあります。

 

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不眠が起きる原因とは? 

不眠の原因とは

 

不眠症の原因は大きく3つに分けることができると言われています。

 

1つ目はその人の素因です。つまり、元来その人が生まれ持った性格やストレスの対処能力などによって、どれだけストレスを感じやすいかが影響するということです。また、加齢や性別も素因の1つであり不眠に影響してきます。

 

2つ目は、不眠の素因を持つ人がさらに不眠を悪化させる要因です。これが世間的に「ストレスによって眠れなくなる」原因と指摘されるものです。

 

たとえば慢性的なストレスを感じる人間関係、お酒の飲み過ぎ、痛みや痒みや頻尿といった別の疾患による身体的な症状などです。特に、最近は新型コロナの流行によって将来や経済的なことなどさまざまな不安を抱えることになり、眠れなくなった人もいます。

 

これはある意味ごくごく一般的なことなのです。

 

3つ目は不眠の状態を長引かせる要因です。これには、まず不眠をさらに悪化させている生活習慣があります。たとえば長時間の昼寝をしてしまっていることや、就寝時間に忠実すぎて、眠気もないのに布団に入って眠れない不安をずっと抱えている、などです。

 

さらに新型コロナの影響で在宅ワークが始まり、通勤がなくなったことで起床時間が遅くなった人もいるでしょう。そこで毎晩のように夜更かしをすると、徐々に体内時計とのズレが出てきて、まるで時差ボケのような状態が生じてしまいます。

 

すると、就寝時間になっても自然な眠気が訪れず、不眠が続いてしまうことがあります。

 

さらには、快適な眠りを妨げる体の中の変化も要因になります。不眠が続くことで交感神経と副交感神経の切り替えのバランスが悪くなり、夜になっても交感神経が働き続けて、体の緊張状態が続いてしまって眠れなくなってしまうのです。

 

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寝ても疲れが取れない。不眠を感じたときの対処法

不眠の対処法

 

不眠の原因を考えると、いかにうまくストレスを解消できるかが睡眠の質を左右していることが分かります。ここでは、睡眠の質を向上させるのに役立つ方法をお伝えします。

 

たとえば、リラックスのための就寝前のストレッチは有効です。ストレッチによって筋肉の緊張を緩めて、精神的まリラックスも期待することができます。

 

加えて、漸進的筋弛緩法という方法もあります。これは、自分の決めた体の部位(両手、上腕、背中、足の下など)に10秒間思いっきり力を入れつづけ、その後に一気に力を抜いて20秒間ダラーとして過ごします。そのときにジワーと体の部位が温かくなる感触を感じる方法です。

 

在宅勤務などで夜更かしが続き体内時計との時差ボケが起きている状態であれば、まずは今まで会社に出勤していたときと同じ起床時間に起きるようにして、今までの生活リズムに近づけることを心がけてください。どうしても昼間に眠くなってしまうときは、15時までの30分以内の昼寝ならばOKとします。

 

また、朝起きたらすぐに太陽光を浴びて下さい。太陽光には体内時計をリセットして、眠気をもたらすメラトニンの分泌をストップさせる働きがあります。そこから15時間ぐらいすれば、今度はメラトニンの分泌が始まって自然な眠気がくるようになってきます。

 

ただし、あまりにも不眠がひどいときはセルフケアだけで解決しようとせず、病院を受診して相談してみましょう。 

 

 

睡眠薬って使っても大丈夫?適切な使い方と使用上の注意

睡眠薬の使い方

 

不眠をきっかけに病院を受診すると、睡眠薬が処方されることがあります。睡眠薬は凶悪な事件のニュースなどでも耳にすることがあり、どこか怖いイメージを持っている人も多いかと思いますが、適切に用いれば安全な薬です。

 

まず、現在睡眠薬と呼ばれるものは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬の3つに分けることができます。もちろん使い分けはありますが、種類が豊富などの理由もあり臨床の現場で主に使われているのはベンゾジアゼピン受容体作動薬です。

 

適切な用法用量を守って使えば重篤な副作用は少なく、長期で利用しても依存性は少ないとされています。ただし、睡眠薬の効果が作用する時間によっては耐性がつきやすくなるものもありますので、絶対に自己判断で容量を増減させたり、中止したりするのはやめましょう。

 

ベンゾジアゼピン受容体作動薬と比較すると、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬の方が安全性が高いとも言われており、最近は後者の睡眠薬が処方される機会も増えてきました。

 

どのタイプの睡眠薬であっても、不眠の症状が改善してきたときは主治医と相談しながら適切な時期に減量して、最終的には服用しなくても眠れるようにすることを目標としていきましょう。

 

そしてよくある勘違いですが、睡眠薬を飲んだから毎晩のように必ずぐっすり眠れるというわけではありません。睡眠薬を服用することで、毎日の不眠が週3日ぐらいに減ったのならば、それは十分に効果があったと判断されます。

 

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井上先生からのアドバイス

現代人は忙しさがゆえに、睡眠が大切であると知っているにも関わらず、ついないがしろにしてしまっています。しかし毎日のことだからこそ、体にとってその影響は大きくなります。

 

特に、新型コロナの影響による精神的なストレスが原因になって不眠になる人が増えているように見受けられます。まずは自分にあったストレス解消法を取り入れて、それでも上手くいかないと思ったときには、早めに精神科や心療内科を受診してみてください。

 

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プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。