昨今、テレビやインターネットなどでも「発達障害」や「ADHD」といった言葉を聞く機会が増えています。周囲にそのように診断された知り合いがいる方も少なくないでしょう。

 

ただ、何となく人付き合いが苦手だったり、何かに強いこだわりがあったり…といったおぼろげなイメージはあっても、具体的にはよく知らない方が多いことも発達障害の特徴と言えます。

 

今回は、発達障害のある方の悩みのひとつ「睡眠障害」について解説します。

 

目次

 

 

発達障害を含む神経発達症とは

発達障害と神経発達症とは

 

精神疾患を分類する指標を示したマニュアルにはいくつかの種類がありますが、その中でも世界的に広く用いられているものの一つに米国精神医学会が発行している「精神疾患の診断・統計マニュアル」DSM・Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)があります。

 

神経発達症は2013年版のDSMで初めて作られたカテゴリーで、この中には注意欠如・多動症(ADHD)のほかに、知的能力障害学習障害(LD)、これまでアスペルガー症候群自閉症と言われていた疾患概念を含む自閉スペクトラム症(ASD)などが含まれ、発達期に発症し、日常生活や周囲とのコミュニケーション、学業や仕事において様々な機能の障害を伴うものを総称した概念といえます。

 

発達の問題、ということになりますが、知的能力によるものや、得意・不得意に極端なばらつきがあるケースまで、個々の症例により問題の程度やタイプは様々です。

 

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DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(日本精神神経学会監修)

 

 

発達障害のある子どもの睡眠障害の症状・原因

発達障害のある子どもの睡眠障害

 

ADHDやASDなどの神経発達症のある子どもは睡眠障害を合併しやすいことが報告されています。

 

その原因としてはメラトニンの分泌リズムが乱れやすい傾向があることや、例えばADHDの場合であれば治療薬として中枢神経刺激薬を使うケースがあることから、薬物療法の副作用としての不眠などが挙げられています。

 

また、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で生活パターンを大きく変えなくてはいけない事例が多く、そのストレスも神経発達症のあるお子さんの睡眠障害の悪化要因として考えられます。

 

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睡眠が乱れたままになってしまうと、学習や普段の生活技能にも影響を及ぼしたり、不登校などにもつながる深刻な問題といえます。

 

 

国内初!神経発達症向け睡眠障害治療薬

2020年6月に発売されたメラトニン受容体作動性入眠改善剤(商品名:メラトベル)は、国内初の小児期の神経発達症に伴う入眠困難治療薬です。

 

これまで、小児神経科領域などで発達障害のある子どもの睡眠障害は広く知られてはいたものの、専用の治療薬はありませんでした。

 

臨床現場では成人の不眠症に対する治療薬を子供向けにも使用したり、海外ではサプリメントとして販売されているメラトニン製剤を個人レベルで輸入するなど、対応に苦慮していました。

 

神経発達障害児向け睡眠障害治療薬

 

神経発達症向け睡眠障害治療薬の効果・効能

子どもにも使える睡眠障害治療薬が承認されたことは、睡眠障害、特に入眠困難の問題を抱える神経発達症の子供さん、そのご家族にとっては朗報といえるでしょう。

 

この薬剤の効果としては、ベッドに入ってから寝付くまでの時間の短縮に加え、日中の機嫌や、異常行動も改善するとされており、この点にも期待が持てます。

 

ノーベルファーマ株式会社「メラトニン受容体作動性入眠改善剤『メラトベル®顆粒小児用 0.2%』新発売のお知らせ」

 

 

神経発達症・発達障害に伴う不眠ケアや治療法

神経発達症や発達障害のあるお子さんの睡眠障害は症状も強いことが多く、不眠のほかに過眠夜驚症なども見られることがあります。

 

生活リズムを整えること、日中は日光にある程度当たるようにすること、コーヒーやコーラなどカフェインを含む飲料の摂取を控える(特に夕方以降)ことなどは神経発達症のお子さんの不眠にも当てはまるアドバイスです。

 

ただ、それだけでは改善しないことも多いため、今回承認された神経発達症児のメラトニン製剤も選択肢のひとつとなるでしょう。 

 

 

まとめ

 

神経発達症や発達障害のあるお子さんの症状、問題は非常に広範囲にわたり、本人も周囲も悩んでいるケースが数多くあります。

 

今回の睡眠障害の治療薬のように、症状による苦痛を軽減するようなツールが増えていくとよいと思います。 

 

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