いまや身近な存在となり、多くの方が利用しているSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。
世界中の人とつながってコミュニケーションをとったり、手軽に情報収集ができる便利なツールですが、ここ最近ではSNS上での誹謗中傷による被害も増えています。
気持ちを乱されずに、適切な距離を保ちながらSNSと付き合っていくにはどうすればいいのかについて解説します。
目次
SNSでの誹謗中傷やトラブルとは
一部のサービスでは実名利用が原則ですが、多くのSNSは匿名で利用することが可能です。
顔や名前が出ている場所では発言内容に責任が伴うことを実感しやすいのですが、こと匿名となると、そうした意識は薄れやすいのが実情です。
そのため、利用者への悪口や批判的・攻撃的な言葉が投げかけられやすくなる傾向があります。
発言する側はあまり大したことがないと考えている言葉でも、書かれた側はひどく傷つくこともあります。
しかし、誹謗中傷を書き込んだ人からは、自分の言葉で傷ついた側の顔も名前も見えません。
匿名であるがゆえに(弁護士を通じて開示請求などを行わない限り)誹謗中傷の相手を特定しにくいということも、こういったやりとりが増える原因となっています。
SNSを利用することで起きる可能性のある症状って?
誹謗中傷のような言葉を書き込まれると、不安や怒り、悲しみなどの感情が現れます。その感情はしばらく継続することもあります。
逆に、日々の生活の中で不満やストレスなどを感じていると、SNSで見かける他人の成功やうれしい体験に対して嫉妬や妬みの感情を抱き、ついつい心無い言葉をかけてしまう可能性もあります。
SNSでは誰もが加害者であり、被害者になることがあるのです。
楽しく利用していたはずのSNSでこういったトラブルが起きると、心身の症状につながることも少なからずあります。
・スマートフォンから離れられなくなる(スマホ依存)
・体調不良が続く など
触っていないと落ち着かない…【スマホ依存度】チェック!あなたは何個当てはまる?
SNSを見ていて疲れや不安を感じた場合はどうすればいい?
怒り、不安、悲しみなどの感情を持つことは自然なことですし、それほど悲観する必要もありません。
時間を置けば改善することが多いものでもあります。
ただ、SNSを通じて精神的な症状が現れたときは、相手と向き合おうと思わずに、とにかくSNSとはいったん距離を置くことが大事です。
SNS上でのやりとりがあまりにショックな場合、体がだるい、吐き気がする、頭痛がするなど、体の症状にもつながる場合があります。
日常生活に支障が出たときは、医療機関(心療内科、精神科など)を受診し、治療を受けたり、相談することを検討してみましょう。
見たくない、でも…。SNS依存の対処法は?
SNSには強い依存性があり、「もう見ないぞ」と思っても、反応が気になって見てしまうことが多いとされています。
出勤・登校前の朝、お昼休憩中、夕食の後の計3回だけ、といったようにSNSと接する時間をあらかじめ決めて、それ以外は触れないようにすることもおすすめです。
それでもSNSを見る時間が減らず、トラブルが出てきたときは、「いったんアカウントを削除する」「期間を定めて電波の届かないところへ行く」など、強制的にSNSをシャットアウトする方法もあります。
極端に思われるかもしれませんが、これが最も確実な方法といえます。
そのほか、SNS以外に目を向けるために趣味を充実させることも大切です。
まとめ
私自身、かつては匿名のSNSを楽しく利用し、また、有益な情報も得ることができました。
しかし、嘘の情報が氾濫し、罵詈雑言が飛び交う様子に疲れてしまい、アカウントを削除したことがあります。
本来、生活を便利にしたり、楽しんだりするためのSNS。その中での誹謗中傷に心を痛め、命を絶ってしまうケースも出ています。
今一度、SNSとの付き合い方を見つめなおし、適度な距離をとりながら利用できる方法を考えていきたいですね。
プロフィール

- 医師 赤木孝匡
- 甲府共立病院での初期研修ののち、救急医療、在宅医療、総合診療などの業務に従事。現在は浅井病院精神科での勤務を中心に、精神科外来・スーパー救急病棟、精神科訪問診療、内科合併症管理などを担当している。