花粉症の症状として、まずつらいのが鼻水や鼻づまりといった鼻炎の症状。

 

この花粉症による鼻炎が、実は蓄膿(ちくのう)症といわれる状態の原因になってしまうことがあるのです。

 

花粉症だけでも大変なのに、蓄膿症とダブルパンチになってしまったら…

 

花粉症に悩めるあなたのために、花粉症と蓄膿症が併発した場合の症状や対策を医師に聞いてみました。

 

目次

 

蓄膿症・副鼻腔炎ってどんな状態? 

副鼻腔炎と蓄膿症

 

蓄膿症は正式な病名ではなく、副鼻腔炎が長く続いている場合をさす言葉です。

 

副鼻腔とは、頭蓋骨の中にある空間で、頬の裏側や額の裏側にあります。副鼻腔は鼻の中と細い道でつながっており、その中は粘膜で覆われています。

 

副鼻腔の粘膜は粘液を出していますが、粘膜細胞は粘液を少しずつ副鼻腔から鼻に運び出す仕組みを持っており、普段は副鼻腔の中には少しの粘液しかない状態になっています。粘液は鼻水として外に排出されたり、唾液と共に飲み込まれたりします。

 

副鼻腔から鼻に通じる細い道が詰まる、粘液を外に運び出す仕組みがうまく働かない、感染や炎症が起こる、作られる粘液量が増える、といった状態が起こると、副鼻腔の中に多量の粘液が溜まってしまいます。それによって顔の痛み・頭痛・頭の重い感じ・鼻づまり・膿のような汚い鼻水・咳や痰(鼻水が気道に流れ込むため)・発熱・不快な口臭・臭いを感じ取りにくいといった症状が現れるのが副鼻腔炎です。

 

1か月以内に治る場合を急性副鼻腔炎、3か月以上続く場合を慢性副鼻腔炎と呼びます。

 

 

花粉症と副鼻腔炎は併発しやすい? 

花粉症と蓄膿症の併発に悩む女性

 

花粉症のうち、鼻にくしゃみ・鼻水・鼻づまりを起こすアレルギー性鼻炎では、鼻や副鼻腔の粘膜に腫れが起こり、副鼻腔と鼻をつなぐ細い道がふさがってしまうことがあります。

 

このため副鼻腔からの粘液が排出できなくなり、副鼻腔内に粘液がたまり、溜まった粘液に細菌やウイルスが増えて炎症が起こり、さらに粘液が増える…といった悪循環になる場合があります。

 

こうしたことから花粉やハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎は、副鼻腔炎を発症する原因の一つと考えられています。

 

 

花粉症と副鼻腔炎が併発すると症状はどうなる? 

花粉症と蓄膿症の症状に悩む女性

 

花粉症に伴うアレルギー性鼻炎のみの場合、鼻水は透明でサラサラしています。症状としてはくしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみが代表的です。同時にアレルギー性結膜炎を起こしていると、目のかゆみ・ゴロゴロ感・充血・涙・目やになどの症状も見られることがあります。

 

花粉症に副鼻腔炎を合併すると、鼻水はネバネバして黄色や緑っぽい色のものが出るようになり、花粉症の症状に加えて顔の痛み・頭痛・頭の重い感じ・鼻づまり・咳や痰・発熱・不快な口臭・臭いを感じ取りにくい、といった副鼻腔炎の症状が見られます。

 

副鼻腔炎単独の場合は、花粉症の症状である鼻や目のかゆみは伴わないのが普通です。

 

 

花粉症から、副鼻腔炎を併発させない対策は?

花粉が飛び始める時期よりも前から、点鼻薬・内服薬・レーザー治療・アレルゲンを少量ずつ体内に取り込む減感作療法などの治療に取り組み、なるべく症状を抑え、鼻粘膜の腫れや鼻水を軽度に抑えるようにします。

 

 

花粉症と副鼻腔炎を併発してしまったら 

花粉症と蓄膿症を治すための服薬治療

 

花粉症と副鼻腔炎を併発してしまった場合には、アレルギー性鼻炎に対する治療と同時に、副鼻腔炎に対する抗生物質を最大三カ月という長期に渡って内服し続ける治療が行われる場合があります。

 

耳鼻科・耳鼻咽喉科で、鼻粘膜の状態を直接見る診察や、レントゲン・CTで副鼻腔内部の液体の溜まり具合を見る検査を受け、根気よく治療を受けましょう。

 

最後に医師から一言

毎年、寒さが和らいできたと思う頃に襲ってくる花粉症は、多くの人を苦しめています。

 

花粉飛散の多い時間帯には外出しない、衣服は毛足の長いものを避ける、家に入る前に服や髪をはたく、外に洗濯ものを干さない、マスクや鼻栓やゴーグルを利用する、こまめに掃除をすることで室内の花粉やハウスダストを減らす、などの工夫によって、体に入る花粉量を減らすことも重要です。

 

 

参考資料

福井次矢・高木誠・小室一成編(2018)『今日の治療指針2018 私はこう治療している』医学書院

鼻アレルギー診療ガイドライン

日本鼻科学会 急性副鼻腔炎診療ガイドライン