子どもの頃、未来を想像して「早く大人になりたい」などと思ったことがある人はどのくらいいるでしょうか。まわりの子と一緒に成長し、大人になっていく。それが当たり前だと思っている人も多いと思います。

 

しかし、世の中には普通の人よりも何倍もの早さで成長を続けてしまう「早老症(そうろうしょう)」と呼ばれる病気があるのをご存知でしょうか?早く成長するということは、早く老いる、ということでもあります。

 

今回はこの「早老症」について、医師に解説していただきました。

 

 

早老症とは

治療を受ける赤ちゃん

 

早老症とは、外見・内臓を含めた全身の老化の兆候が実年齢よりも早く進行する疾患の総称です。

 

早老症は約10の疾患に分類され、代表的なものにはハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群やウェルナー症候群などがあります。

 

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群は、乳児期である1〜2歳頃に低身長や発達遅延がみられます。

 

頭囲・中枢神経の組織の発育は続く一方で、この頃から体格の老化が始まります。そのため、頭部は相対的に大きくなり、水頭症のような顔貌・体格になります。

 

この疾患の患者において、約1年間の老化は健常者の10年程度に相当します。そのため、皮膚では角化などの変化が起こります。

 

また、動脈硬化による血管障害の進行が早いため、糖尿病や高コレステロール血症を発症する可能性が高く、脳卒中心筋梗塞などの病気が多く起こります。

 

平均寿命は10〜13歳程度です。現在までに約140症例が確認され、そのうち9割以上が白人となっています。*1

 

ウェルナー症候群

ウェルナー症候群は、20代くらいから老化現象がはっきりしてきます。脱毛や白髪、両目の白内障が特徴であり、全身の筋肉量の低下、皮膚の角化が目立ちます。

 

また、20代頃から動脈硬化による糖尿病や高コレステロール血症が始まり、40代くらいまでの間には脳卒中や心筋梗塞などの死亡例もあります。

 

現在では早期治療が行われ、平均寿命は50~60歳程度と伸びています。しかし、悪性腫瘍の発生率が高い傾向にあったり、細菌感染をともなう皮膚の潰瘍(かいよう)を繰り返しやすかったりと、適切な治療が必要になることもあります。

 

日本では約2,000人の発症報告があり、世界の報告のうち6割程度を日本人が占めています。*2



妊娠・出産、遺伝について

新生児の手を握る

 

早老症では性腺機能や身体機能の低下がみられるため、妊娠・出産については難しい傾向にあります。

 

また、早老症は遺伝性の疾患です。遺伝性については、患者の父親・母親はそれぞれ早老症の原因となる遺伝子異常を持っていますが、発症はしていない場合がほとんどです。

 

患者の兄弟(姉妹)での発症確率は25%程度ですが、患者の子どもなどが発症する確率はかなり低いです。

 

 

治療について

治療を受ける子供

 

早老症は遺伝性の疾患であり、現時点で根本的な治療法や予防法は見つかっていません。また、早老症の外見的な症状である白髪や脱毛、皮膚の変化などにも予防法や根本的な治療がないのが現状です。

 

足の皮膚の潰瘍などが起きやすいため、「靴擦れを起こさない、長時間寝ころばない」などの予防的な対処が必要です。皮膚に病変ができた場合は清潔を保ち、外用薬・保湿剤などで対応します。

 

一方で、白内障、動脈硬化の疾患(糖尿病や高脂血症)、悪性腫瘍は、一般患者と同じように定期的な血液検査や画像検査、内服治療、手術などの方法で対応が可能です。リスクが高いので早期発見が重要となります。

 

まわりの人にできるサポートとは

患者を支えるサポート

 

早老症を発症直後の方は特に、家族や親戚、友人、職場などに病を隠して生活することがあります。この結果、患者本人が社会で適応しようと無理をすることによって、症状が悪化する可能性があります。

 

家族、友人、職場などが病に関してよく理解し、患者の生活面などに配慮をすることが重要です。

 

 

最後に武井先生から一言

医師

 

早老症の患者数はまだ少ないのが現状ではありますが、このような疾患があることを再認識し、理解を深めていきたいですね。

 

参考資料

*1 ハッチンソン・ギルフォード症候群 小児慢性特定疾病情報センター

*2 早老症Werner 症候群の診療ガイドライン 日本老年医学会雑誌