辛いことや悲しいことがあると、現実逃避ではないですが、自分の感情から逃げたくなる時はあると思います。
ただ、無感情・無表情のような、いわゆる喜怒哀楽の感情がない状態が続くような場合は、心や脳などの病気が疑われる可能性があります。
今回は、感情がない人の原因、特徴、治療法などを医師に詳しく解説していただきました。
感情がない(無感情)状態とは
普通であれば喜怒哀楽、快・不快といった感情が生じるであろう状況で、感情が湧かなくなった状態です。アパシー(apathy)とも呼びます。
Pathyは感情、aは否定語です。アパシーは、「スチューデントアパシー(学生が勉強のやる気をなくすこと)」や老人の無気力、政治に関心がない様子などを指すこともあり、やや定義があいまいな言葉です。
似た言葉に失感情症というものがありますが、これは感情はあるが、感情を言葉で表すことが難しい状態を指し、自律神経の異常と関係し、ストレス性の胃潰瘍や高血圧といった心身症を伴いやすいと言われています。
(参照:厚生労働省 失感情症)
感情がなくなってしまう原因
病気
■ うつ病
気分が落ち込み、喜びや楽しさを感じにくくなります。
■ 認知症
アルツハイマー性認知症などで感情が鈍くなります。
脳の病気の一種で、ドーパミンなどの神経伝達物質が少なくなります。
脳の様々な部位の機能が衰えるため、部位によっては感情に変化が出ます。
■ 頭部外傷
意識が障害されない場合でも、感情が鈍くなることがあります。
■ ホルモン異常
女性に多いとされる病気で、エネルギーの代謝を活発にする甲状腺ホルモンの分泌が不足し、活動性や新陳代謝が低下する甲状腺機能障害などが挙げられます。
現実がすりガラスを通したようにクリアに感じられなくなり、感情も薄れる場合があります。
精神的ダメージ
つらいことが多くあり、恐怖や不快や痛みを感じ過ぎた場合は、その感情を感じ続けると精神へのダメージが大きいです。
その為、感情を無視するようになり、無感動で表情がない状態になることもあります。
■ 被虐待児症候群
虐待を日常的に受けていると、いちいち「つらい」「痛い」「いやだ」と感じていては身が持たないため、そういった感情を封印してしまうことがあります。
災害や犯罪被害に遭った、事故現場を目撃したしたなど、大きなショックがあった場合に起こります。
環境
老人ホームなどで単調な生活を送っている場合や、拘置所などで情報を遮断され季節感もない環境で過ごしている場合でも感情を感じにくくなることがあります。
自分の感情を否定されたり、感情を出すことを自分に禁じ続けた結果、感情を持ちにくくなることも考えられます。
感情がない(無感情)人の特徴
・表情が乏しい
・反応が鈍い
・自分や他人に無関心
・意欲が低下している、何もやる気が起きない
感情がない場合の治療法
専門科目
神経内科、脳外科、精神科、心療内科など
検査
脳に問題がないか、CT・MRIなどの画像検査や心理テストなどが行われる場合があります。
治療
脳の病気が原因の場合、神経伝達物質を増やすような飲み薬が使用される場合があります。
感情を自分で取り戻す方法
どのような感情でも表現でき、ありのままの自分を受け入れてもらえるような環境で生活する必要があります。「自分は怒ってはいけない、不快に思っても我慢しなければならない」といった思い込みが背景にあることもあります。
小説や映画で登場人物が感情を表している様子を見て、状況と感情の関係を学ぶことも良いかもしれません。
最後に医師から一言
感情は人間が自然に抱くものですが、脳の病気もしくは心の問題によって感情が乏しくなる場合があります。感情は生きる喜びと直結しています。
いつまでもみずみずしい感情を持てることが心身の健康につながります。
(監修:Doctors Me 医師)