夏の室内はクーラーなどで冷えていることが多く、特にオフィスなどでは「冷え」が辛いと感じる人も多いでしょう。
しかし、本人も気がつかないうちに冷えてしまっているという「隠れ冷え性」というものがあるのをご存知でしょうか?
今回はこの「隠れ冷え性」について医師に伺いました。
隠れ冷え性とは?
冷え性には決まった診断基準はなく、「冷えが辛くて困っている」という症状を表します。人体の熱は主に筋肉が作りますが、その筋肉が少ない女性に多い症状です。
冷え性には大きく分けて以下の4つのタイプがあります。
四肢末端型
四肢末端型とは、大切な内臓を守るために手足の血管を収縮させて内臓に血液を集めてしまい、手足が冷たくなる冷え性です。
若い女性などで、やせ型や食事が足りない人が、食事によって熱を充分に作り出せず、血の巡りが手足まで行き渡らないために起きます。
下半身型
下半身型とは、腰より下の下半身全体が冷えている状態の冷え性のことです。
30代以降の男女に多く、座る時間が長く、お尻などの下半身の筋肉が動かずに、血流が悪くなって起きます。
30代以降で起こる冷え性の多くがこの型になります。
内臓型
内臓型とは、中高年女性や男性に多く、手足が温かく冷えを感じていないのに実際は体幹が冷えていて、体温が低い冷え性のことです。
交感神経の働きが悪く生まれつき寒くても血管が収縮しにくいため、熱が皮膚から体の外に過剰に逃げてしまい、内臓への血流が低下してお腹が冷えてしまいます。
交感神経が弱いと相対的に副交感神経が優位となるため、食欲が活発になり肥満傾向にある人やアレルギーを同時に発症している人もいます。
また、手術などで血流が悪くなり内臓への血流が低下した場合にも起きやすいとされます。
全身型
全身型とは、特に高齢者や子ども、若い男性などに見られることが多く、体の表面や体内の温度も低下している冷え性のことを指します。
代謝機能の低下が原因で、脳が設定する体温の基準温度が下がっていると体の冷えを感じないことがあります。慢性的な場合は低体温になります。
内臓型と同様に、内臓が冷えるとその機能も低下するため臓器機能や免疫機能の低下など内臓型と同じような症状が出てきます。
体質、慢性的疲労、ストレス、不摂生などによる自律神経の乱れ、薬などの影響が原因になることもあります。
これらのタイプの中では内臓型と全身型が、自分では冷えている自覚がないうちに体の中が冷えてしまうという「隠れ冷え性」にあたるでしょう。
隠れ冷え性の症状は?
隠れ冷え性は、体にどんな影響をおよぼすのでしょうか。
臓器の機能低下
体には様々な酵素があり、消化をはじめ、ものを考える、手を動かすなど、色々な機能を担っています。
酵素が活動しやすい温度は決まっており、37〜38度前後とされています。
内臓型や全身型の冷え性は、手足が冷たくない、もしくは体の他の部分と臓器の温度差がほとんどありません。
そのため気が付きにくいのですが、全身や、特に内臓の温度が低下すると、臓器の機能も低下してしまうのです。
消化管の機能低下、免疫機能低下、栄養不良
酵素の活性が下がると、腸管では消化に必要な酵素の働きが得られなくなるため、消化管の機能が低下します。
これは消化不良や、吸収不良による栄養不良を招くことになり、便秘や下痢、腹痛などを起こしやすくなります。
さらに、消化管には体の免疫系の70〜80%が集中しており、消化管の機能低下は免疫機能の低下にもつながります。
免疫力の低下は、風邪などの感染症、アレルギー、ガンなどの病気の原因ともなり得ます。
栄養不良は、体の全ての細胞の機能に関わるため、元気が無くなる、不眠、頭痛、月経痛といった様々な症状の原因になります。
基礎代謝の低下や他の病気のリスク
体温の低下は基礎代謝の低下にもつながり、エネルギー不足で太りやすくなりますし、低温で血管が収縮しやすくなり、全身の血流が悪くて顔色も悪くなることがあります。
また、冷え性を合併しやすい病気には貧血・心不全・甲状腺機能低下・動脈硬化・糖尿病などがあります。
隠れ冷え性セルフチェック
内臓型冷え性は特に、手足を触ってもなかなか気づくことができません。それぞれのタイプごとに隠れ冷え性になっていないか、自分でチェックしてみましょう。
内臓型冷え性
・平熱が低い
・触ると手も足も温かい
・寒いところに行くと下腹部や太腿や上腕が冷えやすい
・触るとお腹や太ももは冷たい
・お腹が冷える、張る
・下痢、便秘、腹痛がよくある
・全身によく汗をかき、冷えやすい
・汗かきで暑がり
・ぽっちゃり体型
・腰痛や肩こりが続く
・ストレスが多い
・トイレが近い
・食事が不規則
・食事量は多め
・甘いものが好き
・1年中冷たいものが好き
・運動不足
・足を出して寝ることがある
全身型冷え性
・ぞくぞくと寒気がする
・だるい
・食欲がない
・風邪などになりやすい
・平熱が低い
隠れ冷え症を改善する生活習慣
隠れ冷え性を改善するには、一時的に温かいものを摂取するというよりも、以下のような生活習慣を見直し、体質改善をしていくのがよいでしょう。
運動
・運動量を増やし筋肉量を増やすことで、体で熱を作り出しやすくする
・体操、散歩、ストレッチ、筋トレなどの運動をして血流をよくする
食事
・アルコールを摂取すると血管が開いて熱が逃げてしまいやすくなるため、お酒の飲み過ぎをやめる
・極端を食事制限をやめ、カロリーをきちんと摂る
・冷たいものをガンガン飲食しない
・ショウガ湯などの温かい飲み物を飲む
・スパイス、ネギ、ニラ、乾燥ショウガなど体を温めてくれる食材を使った料理を食べる
・タンパク質を摂取する
入浴
・シャワーではなくできるだけ全身浴をする(病気の人や高齢者を除く)
・湯船にしっかり浸かる
その他
・ストレスは適度に解消する
・夜更かし型の生活を朝方にする
・タバコに近づかない
・全身型では体温を上げる効果のある漢方薬を、内臓型ではお腹を温める漢方薬を服用する
運動によって血流と筋肉を増やし、規則正しく食べ、ストレスを減らすような生活習慣を送ることが望ましいと言えます。
最後に松本先生から一言
体は、冷えを感じると血流が低下し、全身の機能低下をまねくことで病気や過剰な老化につながることもあるため、冷えもバカにできません。
冷えの原因は自律神経に大きく関与しており、自律神経は心に大きく左右されます。
現代人は昔の人より平熱が下がったといわれ、現代に「冷え」が多いとされるのも現代型の食事や生活に原因があるのかもしれませんね。
プロフィール
- 監修:医師 松本 明子
- 1968年生まれ、鳥取大学医学部卒業。広島の病院で内科勤務した後、2009年~海外転出し、アメリカで予防医学を学ぶ。 2013年~「DNA Diet and Lifestyle遺伝子に沿った食事と生活」という、オンライン健康プログラムにより自然治癒力を最大限に引き延ばす、老化と病気の予防と治療のための健康指導を行っている。