猛暑の中、海やプールで夏を楽しむ人も多いと思います。楽しく泳いで帰宅したと思ったら、目が赤くなっていたり、ゴロゴロしたり…こんな違和感を感じたことはありませんか?
その目の違和感、もしかすると結膜炎かもしれません。
思いっきり楽しみたい夏だからこそ、事前にしっかり対策できるようにしておきたいもの。
今回は結膜炎について医師に解説してもらいました。
結膜炎とは?
まず結膜とは、白目の表面にあるぶよぶよした透明な皮(眼球結膜)と、まぶたをひっくり返したときに見えてくるピンク~赤色の膜(眼瞼結膜)のことをいいます。
結膜には多くの血管やリンパ組織があります。
眼球結膜と眼瞼結膜は目の奥の方でつながっているので、「コンタクトレンズがずれて目の奥に行ってしまった」というような場合でも、眼球結膜と眼瞼結膜の合わせ目辺りまでで止まり、眼球の裏側に回り込むということは起こりません。
この結膜に何らかの原因で炎症が起こった状態が結膜炎です。
目に違和感…それって結膜炎かも?
結膜炎の種類
結膜炎には、以下のような種類があります。
・感染症による結膜炎(細菌性結膜炎・ウイルス性結膜炎・その他クラミジアやカビなどによる結膜炎)
・ドライアイによる乾性結膜炎
・免疫の異常に伴う結膜炎
いずれも、充血、目やに、かゆみ、涙っぽさ、ゴロゴロした異物感、まぶたの腫れ、見えにくさ、まぶしさ、などの症状が現れます。
目やにと感染について
目やには、原因によって様々な状態があります。
細菌感染による結膜炎では黄色っぽい粘っこい目やにになり、ウイルスによる結膜炎では涙のようなさらさらじゅくじゅくした目やにになり、アレルギーによる結膜炎では白っぽく糸を引くような目やにになることが多いです。
ウイルス性結膜炎は、涙や目やにの中にウイルスが含まれ、接触感染によって他人にうつることがあります。
つまり涙や目やにが付着した手でドアノブなどを触り、それを他人が触ったあとその人の目に触れるとうつってしまいます。
細菌性やウイルス性結膜炎は、風邪などで体調が悪い時に起こることもあり、咳やくしゃみがあることもありますが、結膜炎だけの場合は空気感染や飛沫感染はしません。
そのため患者が涙や目やにが付いた手であちこち触らないように気を付ければ、感染拡大を防ぐことができます。
ウイルス性結膜炎は、いわゆる「はやり目」と呼ばれることがありますし、ウイルス性結膜炎のうち流行性結膜炎など特定のものだけをはやり目と呼ぶ場合もあります。
結膜炎の治療法
結膜炎の治療は原因によって異なります。
細菌性ならば細菌を殺す薬、アレルギー性ならばアレルギーを抑える薬を使用します。
ウイルス性結膜炎ではウイルスを殺す点眼薬というものがまだ存在しないので、自然治癒を待ち、過剰な炎症や細菌の混合感染を抑える点眼を行うことがあります。
結膜炎の治療期間
結膜炎が治るまでの期間は様々です。
細菌性の場合は1週間程度、アレルギー性だと花粉症などの場合はシーズンが過ぎるまで楽にならないこともあります。
ウイルス性の場合は最短だと数日、長引くと2週間〜1カ月程度となります。
結膜炎で夏に注意が必要なのはなぜ?
ウイルス性結膜炎のうち、咽頭結膜炎(プール熱)や流行性角結膜炎は夏に流行することが多いです。ただし1年を通して流行し、冬にも小さなピークがあります。
咽頭結膜熱(プール熱)とは
咽頭結膜熱(プール熱)は、子どもがプールなどで感染することが多く、原因はアデノウイルスによって起こるとされています。
たいていは38〜40度の発熱、頭痛、全身の倦怠感、食欲不振、のどの痛み、結膜炎症状、下痢、血尿などが現れ、3〜5日程度続きます。これらの症状が全て揃わないことも多いです。
結膜炎は片眼から始まり両眼になることが多く、潜伏期は5〜7日とされています。
原因はアデノウイルスの3型、4型、7型などが多く、プールで感染するのは涙を介してというより、腸や尿路でウイルスが増え、水中に出ていくからだと考えられています。
下痢症状がなくても他人に感染させる可能性はあります。
流行性角結膜炎とは
流行性角結膜炎の原因はアデノウイルスの8,9,37,53,54,56型などによるもので、8〜14日の潜伏期の後、結膜炎症状が現れます。
症状は長引きやすく2週間〜1カ月ほどかかることもあり、症状がおさまった後は黒目の濁りが生じ、数年以上消えない場合もあります。
また、発熱、のどの痛み、耳の前のリンパ節の腫れや痛みなど風邪症状を伴う場合もありますが、絶対というわけではありません。
アデノウイルス8型が原因の場合は、結膜細胞に馴染みやすく結膜炎の症状は強いですが、それ以外の全身症状は起こさないことが多いです。
いずれも感染力が非常に強く、顔を拭くタオルの共用などでも感染することがあります。
一度感染しても、微妙にタイプの違うウイルスが多数あるため免疫が成立しにくく、何度もウイルス性結膜炎にかかるということが起こり得ます。
治療については、アデノウイルスには特効薬がないため自然に治っていくのを待つことになります。
多くの場合は後遺症を残さず治りますが、最悪の場合は眼瞼結膜に凸凹ができるため黒目をこすって傷つけてしまい、細菌感染を合併して角膜に穴が開き失明してしまうという例も、ごくまれにあります。
感染拡大の危険性について
咽頭結膜熱と流行性角結膜炎はいずれも集団生活で拡大する可能性があり、学校保健安全法において出席停止が必要な病気に指定されています。
咽頭結膜熱は症状が消えた後2日経過するまでの間、流行性角結膜炎は医師が感染の恐れがないと判断するまでの間、出席することができません。
流行性角結膜炎の基準があいまいなのは、ウイルスの微妙な型により何日で改善するか予想が難しいためです。
検査・診断について
結膜炎の診察時に、人にうつるものなのかどうか、何日で治りそうか、ということは眼科医にもなかなか予想がつきません。
アデノウイルスの「迅速診断キット」という、インフルエンザの検査のようにまぶたを綿棒でこすって目やにや涙を取り、10分ほどでウィルスがいるかどうか陽性・陰性の判定が出るというものはあります。
しかし、同じアデノウイルスでも型の微妙な違いにより検出率が異なり、陰性であっても絶対他人に感染しないと言い切ることはできません。
そのため、万が一でも他人にうつる可能性があるものとして行動する必要があります。
他人にうつさないための方法とは?
以下のようなことに気をつけましょう。
・無意識に目を触らないようにする
これは、自分が患者の時にウイルスを広げないためにも、外からウイルスをもらわないようにするためにも重要です。
外出中は目を触らないようにし、もし触ってしまったら流水と石鹸で手を洗うようにしましょう。
特にコンタクトレンズを扱う前は、十分手洗いをして気をつけるようにしてください。
また、つり革、エレベーターのボタン、ドアノブなど、不特定多数の人が触れた部分を触った手で目をかくといったことは、特に危険と考えられます。
・手洗いは流水と石鹸で、指先や指の間までよく洗う
手洗い後の消毒用アルコールや、速乾性手指消毒薬の使用も有効です。
・点眼薬やタオルなど、目に触れる可能性があるものを人と共有しない
・涙や目やにが付着している可能性のあるティッシュなどは、すぐに捨てる
・ウイルスが付着している可能性があり水洗いできないものは、消毒する
例えばおもちゃなどは、80%程度の消毒用エタノールや70%程度のイソプロパノールなどで拭き取るとよいでしょう。可能であれば1回拭いて乾燥した後さらにもう1回拭くという、2度拭きをするようにしましょう。
・衣服などは乾燥機にかける、もしくは熱湯をかけるようにする
アデノウイルスは100℃で約5秒間、56℃で約5分以内に感染性を失うためです。
・結膜炎症状がある場合には保育園、幼稚園などの集団生活や、プール、銭湯なども避けるようにする
最後に医師から一言
子どもは結膜炎症状があると、気になるためつい触ってしまいます。
その結果、自分の反対の眼や、家族、遊び相手などに感染させてしまうことがあります。
結膜炎と診断され自宅療養になると、「体は元気なのになぜ保育園を休まなければならないの…?」と思う方もいらっしゃるようですが、周囲に流行させないためにもご協力いただきたいと思います。
(監修:Doctors Me医師)