更年期障害とは
閉経前後の5年間、あわせて10年間を「更年期」と呼びます。女性は、個人差は大きいものの50歳前後で閉経を迎えます。 更年期になると、卵巣機能の低下と共に女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が減少していきます。それによって、ほてりや倦怠感、イライラ、不眠など、さまざまな不調が起こります。この更年期症状で日常生活に支障が出ている状態を、更年期障害と言います。
更年期障害の症状
更年期障害の症状や重症度は、個人差が大きいことが特徴です。主な症状には以下が挙げられます。
ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)
更年期障害に特有のほてりやのぼせは、「ホットフラッシュ」と呼ばれます。
ホットフラッシュは自分の意思で止められるものではなく、突然起こるものです。
汗をすぐに吸収する素材の服を着る、カーディガンなどで重ね着をするなど、体温調節をしやすい服装がおすすめです。
急にほてったときは、首元や脇の下を冷たいタオルやペットボトルなどで冷やすとよいでしょう。
多汗・寝汗
更年期障害では、寒暖に関わらず大量の汗をかくことがあります。夜間だと、ひどい寝汗もみられます。
寝汗のために夜中に何度も目が覚めてしまい、睡眠障害に陥る可能性があります。
頭痛
更年期障害では、ホルモンバランスの乱れやストレスなどが影響し、ズキズキとした頭痛や締め付けられるような頭痛がよく見られます。
ただし、急激に現れた頭痛は更年期症状ではなく、他の病気が隠れていることもあるため受診してください。
めまい
更年期障害では、めまいの症状が出ることがあります。
横になっても改善しない、耳鳴りがひどい、意識がもうろうとする、物が二重に見えるなどの場合は、他の病気の可能性があります。更年期障害だろうと決めつけずに、受診しましょう。
吐き気
自律神経が乱れると胃腸への悪影響が及び、食欲不振や消化不全、吐き気を起こすことがあります。
精神的な負担によって症状が増幅されることがあるため、十分な睡眠を取り、ストレスを解消することも大切です。
精神症状
更年期障害になると、気持ちをおだやかにさせる働きをもつホルモンであるエストロゲンが不足してしまうために下記のような精神的な症状が起きます。
- 不安感が強くなる
- やる気が起きない
- 落ち込みやすくなる
- 無性にイライラする
- 怒りやすくなる
- 人に八つ当たりするようになる
更年期障害の原因
エストロゲンの減少
エストロゲンとは、卵巣から分泌される女性ホルモンです。女性らしい体つきを作り、月経や排卵、妊娠などを可能にする役割があります。
エストロゲンの分泌量は、40歳を超えたあたりから減少していき、閉経を迎える前後に激減します。
脳がエストロゲン分泌の指令を繰り返す
閉経を迎えるころには、脳下垂体がエストロゲンを分泌するように指令を出しても、卵巣機能低下のためにエストロゲンは出にくくなります。
それにもかかわらず、脳下垂体からエストロゲンの分泌を促す指令が繰り返し出されることで、ホルモンや自律神経のバランスが崩れて更年期症状をきたします。
更年期障害は、ホルモンバランスの変化だけで発症するのではなく、環境や精神的なストレスなどが複雑にからみ合って現れます。
更年期障害の治療
更年期障害は、一人ひとり症状やその程度が大きく異なります。更年期の症状が日常に支障をきたすほどの場合は治療が必要となるため、まずは婦人科を受診しましょう。医師とよく相談し、自分にあった治療方法を選択することが大切です。
ホルモン補充療法(HRT)
体内に減少したエストロゲンを補うことによって、更年期症状の改善を目指す治療方法です。
子宮がある方は、子宮内膜の増加を防ぐために「エストロゲン・黄体ホルモン併用療法」を行います。子宮の摘出手術を受けた方は、エストロゲン製剤のみを単体で使用する「エストロゲン単独療法」を行います。
ほてりやのぼせ、多汗、ホットフラッシュ、精神症状など、不快な症状の軽減が期待できます。その他に、脂質異常症や骨粗鬆症などの予防効果も報告されています。
一方で、「エストロゲン・黄体ホルモン併用療法」では、乳がんのリスクを上げるというデメリットもあります。
ホルモン補充療法で使用する薬の形状としては、飲み薬、貼り薬、塗り薬があります。それぞれのメリット・デメリットを確認したうえで、自分が使いやすいものを選択するとよいでしょう。
漢方薬
漢方薬は、全身の血流やリンパ、気の流れを調節して、 更年期症状を全体的に改善することができます。
どの漢方薬を使用するかは、一人ひとりの体質や症状、月経の状況などによってさまざまです。
向精神薬
イライラや不安、意欲の低下などの精神症状が重い場合は、向精神薬を使用することで過ごしやすくなる可能性があります。抗うつ薬や抗不安薬など、さまざまな薬の種類があります。
薬物療法だけではなく、カウンセリングでも症状が和らぐことがあります。精神的な症状でつらい思いをしている方は、医師に相談してみましょう。
更年期障害の予防
意識して体を休める
無理をして疲労を蓄積させてしまうと、更年期症状が重くなる可能性があります。意識して、体を休めるようにしましょう。
精神的にリラックスする
いろいろな趣味を見つけて、精神的にリラックスできる状況を作ることが大切です。また、趣味に没頭できる時間を持つことで更年期障害の症状を気にしすぎずに過ごせます。
有酸素運動
ウォーキングやランニングなどの有酸素運動は、更年期障害の症状の緩和と予防に有効です。有酸素運動には、呼吸器や循環器などの働きを活発化させ、自律神経を整える効果があります。
適度な運動は、快適な睡眠や、心身のリフレッシュにも繋がるでしょう。
睡眠
良質な睡眠は、疲労を回復させ、心身共によい影響を与えます。更年期は、ホルモンバランスの変化で自律神経が乱れがちです。睡眠をしっかりとることを意識をして、自律神経を整えるようにしましょう。
就寝前は、お風呂にゆっくり浸かって、パソコンやスマートフォンの操作は避けましょう。脳に刺激を与えないようにしましょう。
食事
甘い物や脂っこい物に偏った食事は避けて、バランスよく栄養を摂取することを心がけましょう。
大豆に含まれる大豆イソフラボンは、エストロゲンに似た働きをすると言われています。豆乳やきな粉、納豆などの大豆製品を積極的に取り入れるとよいでしょう。
ナッツ類は、血液の循環を促すビタミンEが豊富な食材のためおすすめです。
- このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法、専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません
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