ここ数年テレビで頻繁に見かけるようになった「AGA(エージーエー)」のCM、お笑いタレントの方たちが「薄毛、抜け毛、お医者さんに相談だ♪」と歌うこのフレーズを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この「お医者さんに相談だ♪」の「AGA」とは、いったい何なのでしょうか? AGAとは「Androgenetic Alopecia[アンドロジェネティック アロペシア]」の略で、男性型脱毛症のこと。青年期~壮年期以降に発症する薄毛症状のことです。
AGAは、髪の抜け替わりリズムが崩れる事により起こる。
健康な頭髪は、定期的なリズムをもって日々生え変わっています。毛穴から頭を出した髪の毛は、平均で1か月に1センチくらいのスピードで伸び続け、その成長はだいたい2~7年くらい続きます。その期間を成長期と呼びますが、成長期を終えた髪の毛は徐々に抜ける準備に移る「退行期」、抜ける準備が整う「休止期」を経て、成長期終了ののち約3か月超くらいで髪は抜けていくのです。その後また同じ毛穴から髪は発毛し、上記と同様の「成長期~退行期~休止期~脱毛」という過程を繰り返します。
一生の間にこのサイクルを何度も繰り返していくわけですが、これを髪の抜け替わりサイクル「毛周期(ヘアサイクル)」と呼びます。このヘアサイクルが正常に保たれていれば、毎日約100本くらいのサイクルを終えた髪の毛が脱毛し、新しい髪の毛が100本くらい発毛することで、平均で10万本ともいわれる頭髪のボリュームを維持しているのです。ところが、AGAになるとこのヘアサイクルが乱れてしまい薄毛の症状を発症してしまうのです。
AGAは「髪にとっての悪玉男性ホルモン」が原因で発症する。
人間の身体の中にあるテストステロン(男性ホルモン)は、5αリダクターゼと呼ばれる酵素に結びつき5αDHTという男性ホルモンを産生します。この5αDHTが、いわゆる「髪にとっての悪玉男性ホルモン」なのですが、5αDHTが毛根周囲にある「アンドロゲン受容体」と呼ばれる受け皿に結びつくと、前述のヘアサイクルに対し影響をきたします。
具体的には、髪がさかんに成長する「成長期」の毛髪に対し「成長期」を短縮するシグナルを送ってしまうのです。そうなると、本来2~7年程度成長しなければいけない髪の毛は、1年や数か月など非常に短い期間で「成長期」を終え、「退行期」「休止期」ののち抜け替わってしまうのです。そうなることで、本来1日に100本程度であった髪の生え変わりも「より盛ん」になり、毎日数百本といったたくさんの抜け毛が気になるようになってきます。また、このヘアサイクルの短縮とともに毛根は委縮してしまうので、せっかく生えている髪もやがて細くなり産毛化してしまいます。その結果地肌は露出し、やがてヘアサイクルが0か月になった毛根からは、髪が発毛しなくなるのです。
AGAは前額部と頭頂部を中心に発症する。
これらのとおり、AGAは悪玉男性ホルモンがアンドロゲン受容体に結びついて発症をするわけですが、この受容体は前額部(ひたい)と頭頂部(てっぺん)を中心に存在しています。ゆえに、AGAの場合は薄くなるパターンが決まっており、額から薄くなってくるM型やU型、てっぺんから薄くなってくるO型とその混合型に分けられるのです。よって、側頭部(横)や後頭部(すそ)には発症しません。
街中で薄毛の方を見かけた場合、お年寄り以外で側頭部や後頭部まで薄くなっている人はほとんど見かけません。そこからも分かるように、老化現象以外の薄毛は前額部と頭頂部に集中します。ここからも、青年期~壮年期におこる薄毛症状の大半がAGAであることが推測可能です。毛穴の脂や食事、運動不足など、ちまたでは様々な薄毛の原因が語られますが、これらは基本的には関係ないものだという事もここから分かると思います。
AGAの対処法は?
AGAが発症するかどうかは、体質的に発症しやすいかどうかが全てと言っても過言ではありません。悪玉男性ホルモンの影響を受けやすいか否かがその判断基準ですが、その体質は遺伝の要素も大きく影響するものです。医療の進歩により、現代では悪玉男性ホルモンの影響を抑える薬剤にてAGAの治療も可能になってきました。進行の予防だけではなく、具体的に外観の変化を目的とした治療も可能になってきたのです。明らかに抜け毛の量が増えてきた場合や、見た目に薄毛の症状が認められる場合には、AGA治療専門医に相談してみるのが良いと思います。