日本人男性のうち、5人に一人が悩んでいるといわれる薄毛の悩み。日本人の薄毛人口は、全国で1,200万人とも言われています。それはもちろん今に始まったことでもなく、江戸時代の「ちょんまげ」が薄毛対策だったという説もあるように、いつの時代も男性にとって大きなテーマのひとつだったといえるでしょう。そんな誰もが悩みうる”薄毛”だからこそ、さまざまな都市伝説ともいえるウワサが巷には溢れています。今回は、そんなさまざまなウワサについて、お答えしたいと思います。
Q1 ワカメなどの海藻類は、抜け毛予防に効果的?
答えはNoです。髪が薄くなる理由には、さまざまなものが考えられます。加齢によるもの、皮膚炎など頭皮の病気、甲状腺疾患など全身の病気、円形脱毛症、男性型脱毛症(AGA)などがその代表的な物になりますが、なかでも、かねてからいわゆる「若ハゲ」と呼ばれている、壮年期以降に発現し「前額部(ひたい)~頭頂部(つむじまわり)」の頭皮が徐々に露出していく薄毛症状は、その多くが髪にとっての悪玉男性ホルモン(DHT)の作用によって起こる男性型脱毛症(AGA)です。DHTが髪の生え変わりサイクルの短縮と毛根の委縮の原因になるわけですが、海藻を食べる事でその過程が改善することはちょっと考えにくいです。海藻に含まれるミネラルが髪に良いという考え方なのだと思いますが、それだけで抜け毛を予防するのは難しいでしょう。
Q2 薄毛は遺伝しますか?
答えはYesです。男性型脱毛症(AGA)は、髪にとっての悪玉男性ホルモン(DHT)が毛根周囲にある受容体と呼ばれる受け皿にくっつくことで薄毛進行のシグナルを出します。その受容体の感受性がひとそれぞれで異なるといわれており、その過程が遺伝の影響を受けるとも言われています。あくまで体質の遺伝なので、その後の生活により薄毛症状が発現するかは決まってきますので、遺伝があってもそのすべてが薄毛症状につながるわけではありません。家系的に薄毛の傾向がある家庭に生まれた兄弟で、どちらかが薄くなりどちらかが薄くならない場合があるのも、不思議な話ではないのです。しかしながら、家系的に薄毛の傾向がある場合は、やはり男性型脱毛症になる場合も多いようです。
Q3 シャンプーで薄毛は改善する?
答えは、どちらかといえばNoです。仮にシャンプーで薄毛が改善するとすれば、脂漏性湿疹などの頭皮トラブルをもとに抜け毛が増えた場合に、その症状を改善するための抗菌作用を持つシャンプーでケアをした場合でしょうか。その場合においては、適切なケアを行う事により頭皮の状態が改善すれば、抜け毛の減少につながると思います。しかしながら、よく巷で言われる「毛穴に脂が詰まると髪が薄くなる」というウワサをもとにした、シャンプーのケアで毛が生えるという考え方は、明確にNoといって問題ないと思います。というのも、男性型脱毛症(AGA)は髪にとっての悪玉男性ホルモン(DHT)が原因でおこるものですから、脂が関わる余地はありません。また、老化現象や円形脱毛症をはじめとする他の脱毛症についても、脂は原因になりません。そう考えるとやはり、シャンプーで薄毛を改善するのは難しいと言えるでしょう。
Q4 ストレスで髪が薄くなる。
こちらは、条件付きではありますがYesです。壮年期以降に頭頂部と前額部が薄くなっていく男性型脱毛症(AGA)の場合は、ストレスが直接的に薄毛症状をもたらすことはありません。しかしながら、大きくストレスを感じた場合や、それによって睡眠や食生活に影響をきたした場合は、一時的に抜け毛が多くなる場合も考えられます。その場合は、AGAのように症状が前額部と頭頂部に集中することはなく、側頭部(よこ)後頭部(うしろ)もふくめ全体的に症状はみられるでしょう。また、円形脱毛症はストレスが原因で起こる場合も考えられます。500円玉大に毛髪が抜け、その後広がったり数が増えたりもする症状ですが、その症状が出た場合は保険での診療が可能ですから、お近くの皮膚科に受診されることをお勧めします。
Q5 薄毛は病院で治療できるの?
答えはYesです。前述のとおり、円形脱毛症の場合は一般の皮膚科で保険診療が可能です。また、多くの方が悩みに思っている男性型脱毛症(AGA)も、近年医療機関で治療が可能となりました。代表的な物としては、MSD製薬のプロペシアなどが代表的な男性型脱毛症治療薬で、プロペシアの薬効成分であるフィナステリドは髪の悪玉男性ホルモンの影響を阻害することで、抜け毛の進行を妨ぎます。フィナステリドに関しては、ファイザー株式会社よりジェネリック医薬品の「フィナステリド錠」も発売予定です。また、私どものクリニックのようにAGA治療専門の医療機関も増えてきていますが、これらのクリニックでは成長因子を用いた治療や植毛施術など、さまざまな治療もおこなわれています。
Q6 血液型がO型の人は髪が薄くなる。
これは…、ちょっと分かりません(笑) 最近こういった話をたまに聞くことがあるのですが、医学的な根拠は今のところ考えられませんし、何をもってこういう話になったのかちょっと想像もできませんね。単純に薄毛の方の人数をいうのであればA型が一番多くなると思いますが、割合となるとちょっと見当もつきません。日本人の場合、A型:38% O型:31% B型:22% AB型:9% が血液型の割合だというデータがありますので、そこから大きく離れるデータなのであれば、ひょっとしたら何らかの関わりがあるのかも知れませんね。ちょっと、何とも言えません。