2017年冬も猛威を奮い、ワクチン不足も問題になっているインフルエンザ。
11月に入りインフルエンザの予防接種を済ませた方も多いとは思いますが、接種後に気になるのは副反応ではないでしょうか?
今回は、6つのインフルエンザワクチンの副反応について、メカニズムと対処法を医師に解説していただきました。
目次
インフルエンザワクチン副反応1:かゆみ
かゆみが起こるメカニズム
ワクチンに含まれる何らかの成分に対する過敏症、アレルギーとしてかゆみが出ると考えられます。
ワクチンの添付文書には、過敏症として発疹・じんましん・湿疹・紅斑と並んでかゆみが生じることがあると記載されており、その頻度は0.1%以下とされていますが、ワクチン接種部位に全く何の反応もないことの方が珍しいように思います。
逆に、何の反応もないからといって、免疫が付いていないのでは?と心配する必要はないと考えます。
かゆみの対処法
■ 冷やす
数日以内に自然に治まると考えられますが、流水や保冷剤で冷やすのが最も良いでしょう。
熱がある時におでこに貼るような冷却ジェルの付いた湿布を、針の刺し口が空いている部位に直接触れさせるのはやや抵抗を感じるというのが正直なところです。
採血をしても針を抜けばすぐ血は止まることから分かるように、針を刺したことでできる皮膚の傷はごく小さく、そこから細菌などが入り込む可能性は非常に低いと思いますが、滅菌されている製品ではないためです。
湿布の覆いをしているフィルムをはがさないままで、包帯などで腕に固定するか、もしくは針を刺した部位にばんそうこうや清潔なガーゼを貼った上から、湿布を貼るようにしたほうがいいかもしれません。
■ 塗り薬
炎症を抑える塗り薬が使用されることもあるようですが、塗り薬の中にステロイドが含まれている場合、ワクチンに対して起きるべき免疫反応を抑制してしまわないとも限りませんので、どうしても必要な場合に限った方が良いと思います。
インフルエンザワクチン副反応2:赤み(腫れ)、痛み
赤み(腫れ)、痛みが起こるメカニズム
■ 赤み(腫れ)
かゆみと同じく過敏症として起こっていると思われます。薬の成分に対して免疫反応が起こり、抗体が産生されていることによる反応とも考えられます。
■ 痛み
腫れによって神経が刺激されている事にもよるでしょう。ワクチンを接種する二の腕の下側の部位は、神経が少ない部位なので、神経を刺してしまうことによる痛みは生じにくいです.
もし針を刺した際に、ビリビリとしびれるような痛みがある場合は、すぐに医師に申告し、注射を一旦中止してもらうようにしてください。
赤み(腫れ)、痛みの対処法
かゆみと同様、数日以内に収まると考えられますが、症状が強い場合は冷やすのが良いでしょう。
インフルエンザワクチン副反応3:発熱、倦怠感
発熱、倦怠感が起こるメカニズム
ワクチン成分に対して免疫反応が起こっていることによると思われます。
添付文書上は以下の症状が現れることがありますが、通常は2〜3日で消失するとされています。
・発熱
・倦怠感
・悪寒
・頭痛
・一時的な意識消失
・めまい
・吐き気、嘔吐
・腹痛
・下痢
・関節痛
・筋肉痛
発熱、倦怠感の対処法
2〜3日で改善すると考えられますので、水分摂取や休養で改善を待つのが良いと思われます。解熱剤などを使用しても問題ありません。
インフルエンザワクチン副反応4:アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックが起こるメカニズム
ワクチン成分に対してアレルギー反応が過剰に起こることで起こります。
ショックとは、血圧が低下し粘膜が腫れ、じんましんが出て息苦しくなり、腹痛や下痢が起こり意識がなくなると言ったような重症な状態です。
アナフィラキシーはどのような物質に対しても起こり得ますが、インフルエンザワクチンにはごく微量ですがニワトリの卵の成分が含まれており、重症の卵アレルギーがある場合はアナフィラキシー反応を起こしやすくなります。
アナフィラキシーショックの対処法
注射後15分〜30分ほどはアナフィラキシーを起こさないか、接種を受けた病院などで様子を見てから帰宅することが多いです。
ショック状態になっていれば救急車で救急病院への搬送が必要です。救急車が到着するまでは、患者の足を高くして寝かせ、呼吸や脈拍を確認し、必要に応じて胸骨圧迫(心臓マッサージ)など蘇生処置を行います。
■ アナフィラキシーショックとは違う「血管迷走神経反射」
針を刺されたことによる血管迷走神経反射によっても意識を失ったり気分不良になる場合があり、アナフィラキシーショックと見分けがつきにくい場合もあります。
採血や注射が苦手で恐怖心が強い人は、あらかじめ血液が頭に回りやすいように横になった状態で、できるだけリラックスした状態で接種を受けたほうが、血管迷走神経反射を起こしにくいので、医師に申告して配慮を求めるとよいでしょう。
インフルエンザワクチン副反応5:ギランバレー症候群
ギランバレー症候群が起こるメカニズム
ギランバレー症候群とは、神経細胞や神経を覆う被膜のようなもの(髄鞘)に対して、敵とみなして攻撃するような抗体ができてしまうことで起こる病気です。
神経の働きが落ちることで、体が動かしにくくなったり、呼吸がしにくくなったり、目を動かす筋肉が麻痺してものが二つに見えたりといった症状が現れます。
正確な頻度は不明ですが、インフルエンザワクチンに対してギランバレー症候群が起こるのは非常に珍しいことであると考えられますが。
原因としては、インフルエンザワクチンを接種することで、免疫反応が活発になって起こるのではないかと考えられますが、それ以外でも以下のきっかけでも起こることがあります。
・インフルエンザウイルスへの感染
・HIV
・食中毒(カンピロバクターやサルモネラ菌など)
・悪性腫瘍
・妊娠
ギランバレー症候群の対処法
ワクチン接種して数週間程度経過してから、上記のような症状が左右対称に見られた場合は、神経内科を受診します。
血液検査、髄液検査、筋電図検査、MRIなどの画像検査を行います。適切に治療を行えば後遺症を残さず回復するとされています。
インフルエンザワクチン副反応6:ADEM(急性散在性脳脊髄炎)
ADEMが起こるメカニズム
インフルエンザに限らず様々なワクチン接種後や、本物のウイルスへの感染症を契機に起こります。
数百万人に一回以下と考えられる非常にまれな状態で、脳の様々な部位に異常な免疫反応が起こり、 以下の症状などが現れます。
・意識障害
・手足の麻痺
・けいれん
・話せない(失語、構音障害)
・視野や視力の障害
・尿や便のコントロールができない(膀胱直腸障害)
ADEMの対処法
神経内科での検査・治療が行われます。
最後に医師から一言
インフルエンザワクチンにはインフルエンザ感染を予防し重症化を防ぐ効果もありますが、副作用・副反応もあります。理解した上で接種を受けましょう。
(監修:Doctors Me 医師)